重厚長大ハイエンドオーディオは衰退しました? SONY DMP-Z1試聴記

妙に古いラノベのタイトルっぽいので釣るのはやめるんだ

 前回記事の続きですが、eイヤではイヤホンを買う以外にもうひとつ目的がありました。

12/9はSONY DMP-Z1の店頭試聴会がありました。私もこれをヘッドホン MDR-Z1Rで聴いてきましたので、これについて書くのが今回のメインです。

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95万円でTPA6120A2?

この日試聴する前に、夏にこの機器の存在は情報を得ていたのですが、8月に香港で販売をスタートさせていて、国内展開は12月からという流れでした。

近年は国内メーカーが高級機をまず海外展開させてから国内へ持ち込むパターンがちらほらありますね。オーディオテクニカも欧州向けに展開していてまだ日本には入れていないアンプがあったような気がします。

 

DMP-Z1を最初に記事で見たときは、はっきり言いますが音については全然期待はしてなかったです。アナログアンプ部にTPA6120A2と見たときは正直落胆しました。

数万円の中華アンプにも使われているようなもので、他にも選択肢はありそうですがよりによってこれですか。。。

元々SONYはS-MASTER HXというデジタルアンプの技術が蓄積されているはずです。これを今回のような高級機で、あえてアナログアンプで構成するというのなら、せめてディスクリートで組んでほしいなと思ったものです。

 

あれ?意外と周りの評判が・・・?

良いんです。ゲスト出演してきました雪みかんさんとか(

おふざけはこのぐらいにしておいて、こちらです(

 🐺さんとは嗜好のポイントはもちろん人それぞれですから私とも異なるわけです。でも私はこのお方の耳の良さと「本当に良いものを聴き分ける」判断力に関しては一目置いていることをここで告白しましょう。

特に「音の濁り」には私より敏感です。

 

聴いてみた

本当は15・16日のポタフェスで開発担当者からお話伺いたかったのですが、その週は土日両日予定があったので、9日のeイヤ店頭試聴会で聴いておくことに。

見た目はDAPの延長線上みたいな印象ですけど、ちゃんと据置のヘッドホンアンプレベルの音が出てます。流石にOJISpecialとか単体100万円クラスと比べるとまだまだ及びませんが、想像していたレベルよりはだいぶ良かったです。

バッテリー駆動というと、クリーンではあるけれど力感が弱いというのがありがちな例ですが、DMP-Z1はしっかりグリップして駆動できています。個人的にはChord DAVEのHPA部よりはDMP-Z1の方が良いと思いました。

ちなみに、ローゲインかハイゲインなのか、試聴時に確認を忘れていました。MDR-Z1R ヘッドホンとの4.4mmバランス接続なのでおそらくハイゲインではないかと思いますが。

 

美観と機能性と音質と

私は未だに「大きくて重い」機器への憧れが捨てられません。役割ごとに機器を分離させ、しかもそのひとつひとつが無駄に大きく、接続するケーブルの数も必然的に多くなる(しかもケーブルそれ自体が太く重いという始末)。。。

振り返ってみると、トータルでは結構な金額をオーディオに費やしてきた自覚はあります。

 今はこのLacieのHDDは小さな外付けSSDに変更しましたが、一般的な美観の悪さという点ではさほど変わりがありません(笑

特に自宅の環境ですとJPLAYのネットワークオーディオに対応させるためにLANとUSBのデジタルケーブルの本数が多くて。。。

この上段にDACとHPAがあって、まぁ見た目は似たようなものです。

 

SONY DMP-Z1は、この1台をデスクサイドに置くだけで、(少々覗き込む必要がありますが)内蔵の液晶モニターで選曲・プレイリスト作成もできるので、後はヘッドホンだけでシステムが完結してしまいます。

見た目のスマートさは、明らかにこちらの方が現代的です。

 

過去の「オールインワン」へのマイナスイメージ

かつてはこうした複合機というのは、多機能性を重視した結果音質は片手落ちになるというのが通例でした。

古くはLuxman DA-200から始まり、Burson Audio Conductor V2が登場したときには、結構この手の製品も進化の軌跡が見えるなとは思いましたが、それでも私にとってはまだ満足できる音が出ているとは感じられません。

電源を各部で共有していることが音の力感や駆動力のなさ、分離が悪く混濁を感じる要因となっていて、カタログスペックでは良く見せているけど実力が伴っていない印象が目立ちました。

なので、私は「音質にこだわるなら、やっぱりセパレート構成を」と思ってしまうわけです。

 

重厚長大ハイエンドオーディオは衰退しました?

キャッチーな見出しを付けてみたかっただけで本当に衰退してるとは思ってませんのでご安心ください(

私がここで述べたいのは、DMP-Z1のような「統合型システム」で、それが本当に音が良い機器であれば、それに越したことはないですよね?ということ。

趣味的な意味では、ケーブルをあれこれ試してみる、オーディオラックはあれが良い、インシュレーターは・・・というようなマニア的な楽しみの要素は消えてしまうわけですが、DMP-Z1はそうした層をターゲットにはしていないのでしょう。

ウォークマン」に親しんできた人にとっては、オーディオラックに2台、3台と機器を格納する仰々しい見た目よりも、DMP-Z1をこれ1台とヘッドホンで完結してしまう方が親しみやすい、ポータブルオーディオの延長線としてイメージしやすいのではないでしょうか。

 

低能率・高インピーダンス設計ヘッドホンの弱点

私がオーディオに興味を持ち始めた頃、2012年あたりのことですが、当時は低能率・高インピーダンス設計のヘッドホンを、大出力ヘッドホンアンプで動作させることが良いと言われてきました。ある種のステータス的なノリもありましたね。

Audeze LCD-3も初期型はすごく鳴らしにくいことで有名だったんです。かなり高電圧を掛けないと低音がすっぽ抜けます。

学生卒業したばかりで、まだちょっと手が届かなかったですが、これらのヘッドホンをしっかり駆動できるフルサイズの大きく重いアンプには憧れたものです。

しかし、それから数年に渡って色々試聴したり実際に製品を購入して経験を積んでいくと、これらの「鳴らしにくいヘッドホンを高電圧を掛けてドライブする」システムの弱点が見えてきました。

 

「軽やかに歌わない」んですね。遅くて重い低音、暗くて伸びない高音の組み合わせが典型的でした。そして今の私が最も重視する要素「音の毛羽立ち、産毛のような微細な情報」が消えてしまっているんです。

つまり、ドライバーが低能率であることによって微小信号をロスしていて余韻が引き出せていないのですが、結果的に音の表面がツルツルしていて耳障りな嫌な音を出さないので、これを良しとする人が多いのも理解はできます。

「綺麗ではあるけれど、凄み、エグみのような要素は表現されていましたか?」と問うてみたい気持ちはありますが。

 

そしてこのような音の傾向は、過去記事にて散々書いてきましたが現在のDAC・デジタルプレイヤーにおいても同様です。今回のDMP-Z1も例に漏れず。

音は良いけど、かなり意図的に表面を研磨して滑らかにしているのがすぐに分かってしまったので、私の求める方向の音ではないです。

私にはその「削り取った薄皮の間」に重要な音楽的情報が詰まっているのですが、これを理解してくれる設計者は、今はなかなかいないのでしょうね。

 

「鳴らしやすい」のは良いこと

近年、ハイエンドヘッドホン界隈においても、高能率・低インピーダンスな設計の新製品の割合が増えている印象です。

Focal Utopia , Final D8000 , Meze Empyrean etc...

旧世代ハイエンド機というと、beyer T1(600Ω) , Sennheiser HD800(300Ω)

この両機はインピーダンスは高いですが能率は102dbなので、音量を確保するだけならHD800であればDAPでも何とか可能です。しかしそこから出てくる音は弱々しくて全く物足りないものです。電圧が足りていないからですね。

T1に至ってはアンプ次第で相当出音が変わります。これについては🐺ちゃんのエントリの方が詳しいのでご覧くださいませ。

 

www.bergamotflavor.com

 SONY DMP-Z1は4.4mmバランス入力は備えていますが、6.3mmシングルエンドはありません。(シングルは3.5mmステレオミニ)

バランス側も、据置アンプで主流の4PinXLRや3Pin×2は備えていないので、ここから察するにローゲインではイヤホン、ハイゲインでは普通の感度のダイナミック型ヘッドホンなら鳴らせますよ、という感じでしょうか。

 

それに関して不満があるという方の意見も、十分わかります。しかし今後登場してくるであろうヘッドホンは、ハイエンドであろうと以前のような低能率・高インピーダンス設計ではないものが主流になると私は思っています。なので旧来の低能率設計なヘッドホンに合わせるほどの高出力にするという選択はしなかったのではないかと。

DMP-Z1を購入されたユーザーは、外で聴いていたイヤホンをDMP-Z1でも聴いてみたいと思う人は多いでしょう。

だとすれば、DMP-Z1のローゲインモードは結構控え目な出力になっているのではないでしょうか。SONYですから大企業なりの安全策を講じていると思うんですよね。

これについては年明けに銀座のソニーストアにて確認してみることを予定しています。