逢瀬 WATERFALL

前回記事で少し触れた逢瀬について語ります。

ココトンカワイイヨココトン

秋のヘッドホン祭での展示構成は以下です。

ause-audio.com

音質評価の前に、まずはWATERFALL Integrated 250(以下WF250)について紹介です。

デジタルボリューム機能付きDAC+パワーアンプという、これ一台あればスピーカー or ヘッドホンでかなり高い次元まで行けますよ、的な製品ですね。(ヘッドホン出力も付いています)

パワーアンプ部のNcoreも素晴らしいですが、個人的にはDACとしての優秀さを評価しています。

情報量と分離、高S/Nで言えば定価の倍以上80~100万クラスと比較しても負けてないと思います。MYTEK Digital Manhattan DAC IIからオーディオ的なケレン味を抜いた感じ、というとわかりやすいかもしれません。このDACは試聴したことがありますが、基本性能の高さとオーディオ的な音作りの巧さが共存していました。爽やかで晴れやかと言いますか。

ハイエンドオーディオ的な高音の僅かなアクセントを上手く出している感じがします。

WATERFALLシリーズのコンセプトのひとつに、ハイエンドオーディオ的なある種の味付けを意図的に排除するというものがあります。ある意味でそれは見事に実現されているということでしょう。

色彩感はやや淡色で旭化成DACの気配が漂ってますね。透明感はありますが若干色味は青に近いので、そこだけ私の好みからズレてます。私は少しくすんだ感じであったり、黄色に近い方を好みます。ちなみにESSはもっと青が強いです。

 

システム全体としての印象に移ります。2種の経路の展示のうち、まずはハイエンドの方から。

去年も逢瀬の音はヘッドホン祭で聴いています。DAC自体は同じなので、それより上流の変更に対する出音の変化というのがポイントとなります。

(トランスポート~DDCDACに信号を入力までの経路を上流と定義します)

私もこの1年ほど、この領域に対してはそれなりに気を使ってきました。AXIOMTEK製工業用ファンレスPC(Win10Pro搭載)を始めに、JCAT USBアイソレーターがその代表例で、DDCのiFi audio iONEも、XMOS基板で同軸出力はガルバニックアイソレーションが施されている仕様となっています。接続する2本のUSBケーブルもあれこれ試しました。

(最終的にはNordost Heimdall2とWireWorld Platinum Starlightで固定)

しかし逢瀬が投入してきたデジタルコンバータ試作機は、こういった従来の製品の効果を軽く凌駕しています。私が上記の対策で向上を感じた点というと低域の安定感というのが第一です。中高域の神経質さは多少軽減されてますが、やはり効果が大きかったのは低域方向です。

逢瀬のデジタルコンバータを経由しての印象は、まず中高域の質感です。これは今までのPCAudioでは実現できなかった「音像周辺の気配感、空気感」が漂っています。どこかアナログ的なイメージさえ浮かびます。

従来のPCAudioというのは、中級クラスのCDプレイヤーと比較して情報量が多く、音像の滲みが少なくてキレが良く、低音の土台の安定感があるという方向です。私の環境もだいたいこのレベルです。少なくとも普通に手が届く範囲の価格帯のCDP(40万ぐらい?)から出る音よりは良いよね、というところまでは到達している感じはあります。

逢瀬のデジタルコンバータはこの上を行きます。世の中にはCDプレイヤーのうちDACとトランスポートで筐体を分けて、トランスポート側だけで100万円を超えてしまうような機器がありますが、そういった機器が存在する理由が何となく理解できるかもしれません。

こういった機器の試聴経験は流石に少ないのですが、印象的なものがひとつあります。

ぐっちょんさんに連れられてダイナミックオーディオ5Fで聴いたORPHEUSのSACDプレイヤーの音です。価格750万円でトンデモなことになってますが。。。プリとパワーアンプはConstellation Audio、スピーカーは803D3という構成でした。

このシステムで感じた音というのは、音像周辺に、ふわっと漂うような微粒子感がさらに外側に存在するということです。そして高域に僅かに上品な脚色があります。いわゆる「ハイエンドの薫り」というアレです。CHORD DAVEにもこの特徴は存在します。

逢瀬のデジタルコンバータを経由した音というのは、上記から「高域の脚色」を取り除いた音です。つまり音像周辺のさらに微細な情報が掘り起こされているということであり、「ハイエンドオーディオらしい音」のひとつの条件をクリアしていることになります。

 

システム2「標準構成」と比較してみます。トランスポートとして用いるプレイヤーはCD専用機ではなくて一般的なDVDプレイヤーでした。それでもWF250の内部に簡易的な光ブースターが搭載されているので、トラポの質をある程度カバーできるということにはなっています。

それでもこちらの音は、ハイエンドの方と比べると誰でもすぐに判断できる明確な音質差があります。音像が輪郭で縁取りされ区切られた感じがあり、中高域の質感に僅かな硬さの残る音です。

 

-上流への投資は音楽性の向上に直結する-

私がDACよりさらに上流の部分をあれこれ試してたどり着いた結論です。JPLAY購入後はPCがネットワークトランスポートとしても機能するようになったので、LANケーブルやLANアイソレーター、ネットワークハブの吟味といった部分もこの領域に含まれます。JPLAYについては6.2→7.0アップデートで飛躍的な音質向上が認められましたので、これは次回記事にて詳述します。

逢瀬のデジタルコンバーターは明らかにこの延長線上に存在し、今までのオーディオアクセサリー群で細かくひとつひとつの要素を埋めて継ぎ足ししていく面倒さから解放してくれるかもしれません。

ネットワークプレイヤーで有名なSforzatoの音質向上ノウハウについて書かれたページ

http://www.sfz.co.jp/networkhowto.html

いろいろな対策ですが、1つだけやってみても効果が薄いと感じるかもしれません。ただ、万全の対策を取った後1つ外してみるとその効果がとても大きかったと感じると思います。また、いろいろやってみて最後の1個がとても効果的だったと感じるかと思います。ノイズ対策は嵐の日に1つ1つ窓を閉めていくような作業だと業界の大先輩がおっしゃっていました。確かにあちこち窓が開いていれば1つくらい締めても効果は薄いですが、最後の窓を閉めた途端に思い切り静かになったと感じられるでしょう。

私もまだまだ道半ばです。趣味的にこうした詰めの作業が楽しいこともまた事実ですが、当初想定していた予算よりいつの間にか膨れ上がってしまった、というような方もきっといることでしょう。

逢瀬のデジタルコンバーターはトランスポーター自体に多少問題があっても、それを一定以上の品質に「主体的に」担ぎ上げてくれるものであって、従来のオーディオアクセサリーのような「補助的な」効果に留まるものではないと感じました。それだけ効果の度合いが違います。

そして末恐ろしいのはこれが「構想第一試作機」であると。まだまだ改善余地が残っているとのことで。。。完成品はこれよりずっと良くなるというお話でした。

私は技術的な面についてはあまり明るくないのですが、お話を伺ったところでは現在市場にある製品は「絶縁」するところまでは目を向けているけれども、そこから信号を正しく再生成することであったり、さらにその先の部分に対しては十分ではないとのことです。後は単純にケースの大きさの制約による物量の不足といったところでしょうか。

なので価格はWF250までにはならないけれど、現時点では20万円あたりになるでしょうというご回答でした。ケースの大きさもDACと合わせてあるので、オーディオアクセサリー的な脇役位置でなくてDACとスタックして見栄えも良くなるような感じになりそうです。

私は機材を重ねて使うことは振動の観点から絶対に避けるようにしているので、現時点ではちょっと置き場所が。。。

来年秋までに何とかお迎えする場所を確保したいと思います。

(オーディオラックが天板とポール継ぎ足しで増設できない構造なので、参ったなぁ・・・

 

P.S.

記事の本筋から逸れますが若干追記です。

前回の記事「D8000ファーストインプレ」で

逢瀬でUtopiaとD8000を両方聴くことが出来て、より可能性を見出せたのがD8000だった

これについて補足しておきます。

Focal Utopiaは環境を良くしても結局中高域の硬さが基本的な傾向として残ると感じました。

ベリリウムという素材が、物性としてそういう特性を持っているのかもしれません。

D8000の方が低域のスケール感があり、中高域はそれほど神経質にならず、おおらかな鳴り方です。音楽性として自分の求める方向は明らかにD8000の方が近いと判断し、この段階で最終的にUtopiaを選択肢から外すことができました。