もうひとつの基準

1. 90年代のDACをお試し購入

前回の更新で、80年代や90年代の古いDACに興味があると書きましたが、

rays.hatenablog.com

TDA1547(通称DAC7)が搭載された90年代の国産品 TEAC D-T1を買ってみました。

TEAC D-T1の仕様 ティアック

 

10年ぐらい前の某掲示板では、DAC7搭載機が某声優の声を甘く魅惑的に再現してくれる、なんて書き込みが目立っていました。

その中にはD-T1も、何度も話題に出ています。

釘宮ボイスとDAC7

あれ?hayateさんがいる。。。

 

安く手に入れたので、期待半分、不安半分で音出しです。

 

2.やはり安易だった(笑

「あれ?暗い・・・」

元々高音が強調された音源でも、角が丸くて聴きやすい音にはしてくれるんですが、私が期待していたような音の色は再現してくれません。

このような傾向であれば、落ち着いている中での緻密さや表現力、色彩感の良さというのが欲しいのです。しかしこれは、ただまったりしていて大雑把で、そして暗い音色です。

空間も全然広がらないし、立派な面構えの割には低音もまるで出ません。

 

古いDAC7なら、TDA1541なら音がいい、という考え方は、結局ベクトルを反対にして

新しいES9038なら、AK4497であれば音がいいと言ってしまうのと同じなんですよね。

最終的な出音の良さというのは、やはりエンジニアの思想と音楽性であり、それらをアナログ出力段の回路に落とし込むことによって生まれるものだということ。

もう6年ぐらい前になりますが、TEACはUD-501・HA-501のセットを聴いて、「どっしりしてるけど何か野暮ったいというか、暗いな・・・」と感じました。

元々そういう音作りのメーカーだということをすっかり失念しておりました。

 

3.大切なのは、やっぱり中域

予想を下回る音だったので正直落胆はしたのですが、音楽的には一応成立しているというか、これはこれで「聴ける」音なんですよね。

それはなぜかと考えたときに、上下のレンジを狭めてでも中域の濃さが確保されているからなのです。

そして一音一音の繋がりにメリハリが付きすぎないので、音の流れが自然に感じます。半面スピード感は遅いと言わざるを得ませんが。

 

半面この5~6年で市場に出回っている(いた)比較的低価格帯のDAC(CDP一体型を含む)を思い出してみて、この中で「中音が充実していたもの」とは?

過去の記憶を辿っても、特に国産メーカーで印象に残っているものはほとんどありません。

近年特にハイレゾ対応をクリアするために高音の再生限界を伸ばすことにばかり注力して、現在は各部品の供給コストが増したことで物量投入ができなくなり、結果低音が出なくなった状態を「スッキリ」と言い換えたような気さえしてしまいます。

今、D-T1のような5mm厚のアルミケースで、フルサイズの筐体の製品が8万円で出せますか?

音は正直価格相応だとは思いましたけど。ことガワに限っての話です。

 

4. 軌道修正用の「もうひとつの基準」として

PAGODA DACに戻してみると、一気に空間は広がって明るさが蘇ります。

でも、なんだかちょっと高音キツいような?

1年半前にこのDACを買った当初は、もう少し落ち着いた音だった記憶もあります。

普段から「中域の濃さが大事」って言っておきながら、気がつくとまたHiFiの道を進もうとしてしまう、こんなことを私はしょっちゅう繰り返しているのです。

 

しかしそれも今回でループを断ち切れそうです。

真逆の音を一度インプットすることができたのですから。DACだけで全体の音がここまで変わるんですね。。。

ずっとひとつのDACでやってきた時期が長かったので。ケーブルとかはちょこちょこ替えたりしてるんですけど、このレベルの変化は出せないです。

 

TEAC D-T1は純粋な音に対する満足度は残念と言わざるを得ませんが、世間的に良しとされているHiFiな音とは真逆の基準を別にひとつ持っておくことで、私が今後また道に迷い始めたときに立ち戻る「軌道修正用」として、手放さず持っておくつもりです。

あまり稼働機会は多くないと思いますが(笑

 

5.少しだけ「逆側に」寄せていく

JPLAYStreamerを介したネットワークPCAudioということで、トランスポートのPCのプロセスカットを始めとして、これまで色々な対策を施してきたのですが、あえてこれらを緩めることで「音にゆとりを持たせる」方向に軌道修正です。

 

まずFidelizerの適用をやめました。

www.fidelizer-audio.com

OSの設定やプロセス優先度をPCAudio向けに最適化するソフト。

確かに解像度やオーディオ的指標の部分では向上が見られますが、音の温度感が下がってドライな傾向になってしまう面がどうしてもありました。

導入当初から薄々気づいてはいたんですが、実際に使用を中止しようと決断できたのは、やはりTEAC D-T1の音を聴けたから。

 

さらにJPLAYの設定を変更していきます。

Engine:ULTRAStream→Xtream

DAC Link:170Hz→5Hz

PC Buffer:0.1sec→1sec

XtreamSizeは以前、最大値5000まで上げていましたが、動作不安定さ回避のため500まで下げました。

根本的な音の傾向はEngineで決まります。Xtreamの方が中低域の力感が出ます。

ULTRAStreamは中高音の繊細さでは有利ですが、反面神経質な音になりがち。

DAC Linkも下げた方が音が太くゆったりとした傾向に変化します。

 

さらに、タブレットでのコントロールをやめてPCからkinskyで操作する使い方に戻しました。

結局ヘッドホンオーディオなのでPCとモニターの前にいるわけですから、こっちの方が楽なんです。

PC上で再生ソフトを展開しないタブレットコントロールは余計な処理を避けて音質を向上させる意味では有効な手段ではありますが、結局私にはBubbleUPNPのUIがそれほど使い勝手が良いとは思えなかったので、便利なPC操作に再度戻ってきたわけです。

タブレットコントロールで音が良くなったか、今思えばほとんど実感はなかったです。

 

後はDDCのコントロールパネル開いてレイテンシをLowからStandardへ緩めたり、ストレージをSSDから3.5インチ外付けHDD(lacie製)に変更する等、他にもありますが些末なことなので省略します(

 

6. 目的と手段の倒錯

まだ落としどころは試行錯誤の段階ではありますが、以前の音よりはだいぶゆとりが出てきました。

(狭い)世間ではJPLAYでDACLink700Hz再生を達成するために躍起になっているようですが、(OSの設定を極限まで詰めないと音が出ないようです)

何か根本的なところで目的と手段がすり替わってはいないか疑問に思うことがあります。

 いつ音が途切れるかわからない、そもそも頭から再生されないこともしばしば、そんな中で音楽聴くのって嫌じゃないですか?(笑

かく言う私もその手の道に片足突っ込んで、嫌になって出てきたわけですね。

結局、HiFiな音にはなっても音楽性の向上という面では、さほど恩恵を授かれなかったように思います。しかも「いつ動作不安定になるかわからない」という、見えないストレスに苛まれていく。。。

PCAudio、ネットワークオーディオはそもそものスタートが、部屋の中で聴きたいCDを探さなくてよかったり、PCの前まで移動しなくてもソファーに座ったままタブレットで選曲できる、そういう利便性から始まったわけでしょう。

 

趣味というのはある意味では細かい変化に気づくこと、試行錯誤してみることは必要なんですけど、そこに悪い意味でのストレスが付随するようでは、それでは何の為の趣味なのか・・・