その人の音

1.ヘッドホン祭の試聴インプレ

 マス工房の超ド級ヘッドホンアンプ、model406。180万円・・・

モニターアンプとしてこれ以上のものはないでしょう。

限定5台生産のうち3台売れていて、日本人は1人だけなのだとか。

情報量・密度・定位・音の立ち上がりと下りの正確さ、どれを取っても最高峰にあると思います。

空間の広さはOJISpecialに分があるかな?

音色や質感はDACやCDPの影響を100%反映させるようにできていて、逆にこのモニターアンプ特有の癖は何も持っていません(そうでないと用途的に困るのですが)

ヘッドホン祭では毎回DENONのプレイヤーを相当苦労して(25kg。重いんです)搬入されているんですが、正直に言って私DENONの音、ダメなんですよね。。。

 「基本性能は高いけど音楽的な違和感を我慢して聴いてる」状況下に置かれます。

今回マス工房さんはHiFiMAN SUSVALAを購入されてデモしていましたが、持参したHD800よりも性能が高いせいかCDPの音の質感の悪さを余計に曝け出してしまい、あまり聴き込めない結果となってしまいました。

本当に良い上流で一度聴いてみたいのですが。。。

 

 奥に写っているのはEAR(Esoteric Audio Research)創始者、ティム・デ・パラヴィチーニさん。

その人の雰囲気って、作られた機器の音に現れるものなんだなと、聴きながら納得していました。

暖かく、優しく、それと相反する鮮烈な表現を持ち合わせていて、生命感がある。

音の背景はWM8741らしさが良く出た黄色。私はこの色がとても好きです。

前述のマス工房のブースとは対極に位置する音です。

音の立ち上がりが多少遅い面がどうしてもあって、速い刻みを正確にこなすことは苦手だと感じます。

低域は量感はそこそこあるけれど沈み込みはやや浅く、この価格帯から考えると中高域寄りな印象もありますが、EARはとにかく音楽性の豊かさで人を惹きつける力が群を抜いています。

 

 今回のヘッドホン祭は2日目の午後に少し顔を出したくらいなので、あまり聴き回ることができませんでした。この他にはOCTAVEでfinal D8000を聴いた程度。

 D8000は平面駆動型とダイナミック型の中間のような鳴り方をします。

SUSVALAより音の焦点が分かりやすく、凝縮された密度の濃さが特徴的。

若干頭内定位が強い傾向があり、近年のヘッドホンがスピーカー的音場形成を目指した方向性に対してD8000はある意味「ヘッドホンらしい」空間となっています。

 

2.デジ研で驚愕の下克上が?

ヘッドホン祭開催期間中の恒例イベントのひとつとして、デジ研(デジタル研究会)があります。ヘッドホンイベントなのにスピーカーでデモを行いますw

audiostation.jp

私は両日において時間が足らず参加しなかったのですが、当日にお会いした方の中から興味深い情報がありました。

 

 Meridian Ultra DAC(270万円)とChord Qutest(20万円)では10倍以上の価格差があります。しかしそれがmacとdelaのトランスポートの違いだけで逆転現象が起こったということのようです。

*5/7 P.S.

Meridianが開発した「MQA」形式ですが、これは「非可逆圧縮」方式とのことです。

従来のmp3等と比較して音質劣化を抑えつつも低容量化を実現しようと試みたのだと思いますが、やはりピュアオーディオ的な意味で「聴感上」ロスレスと同等のクオリティが実現できているのか疑問が残る結果となったのでは?

つまりデジ研では、トラポの違い+MQAの2つの要素が重なって、DACの価格差を逆転する結果となった模様です。ここで、どちらがどの程度影響を及ぼしているか、そこまでは現時点ではわかりません。

 

繰り返しますが私はこのイベントで実際に聴いていませんので、何とも断言できません。

しかし私はこの結果について、別に驚いてるわけではないんです。普通にありえる話だなと。

 

3.性能が高ければ高いほど、使いこなすのは難しくなる

確かにDACはデジタルオーディオにおいて重要な機器のひとつではあるんですが、それはD/Aの変換精度が正確になるだけであって、それより上流から入り込んでくるノイズ量が多ければ、かえってその悪影響をより強く反映してしまうこともありえます。

DAC筺体内部にもジッタークリーナーなどは備えられていると思いますが、それだけでは実際に運用する上では間に合わないということでしょう。

 

私自身も、DACを更新したことそれ自体よりも、その後のさらに上流への対策を細々と詰めていったことによる音質の変化の方が、体感的に改善度合いが何倍も大きかったのです。そしてそれらの対策は、今もまだ終わりが見えていません。

 

 最近はJPLAYStreamerを適用したことにより音源がLANを経由しています。この場合は共用ルーターから流入するノイズ対策が必須となってきます。

ルーターからは3mのSAEC製LANケーブルでラック中段まで引っ張り、スイッチングハブで中継してPCまではオーグラインのLANケーブルを50cmで短く接続することに決めました。

www.audiounion.jp

(音源管理はNASではなくE-SATA接続の外付けHDDで運用しています)

ルーターからPCへ直結するよりも、ハブを経由した方が圧倒的に音質が良くなります。ハブ自体は4000円ほどの市販品ですが、金属筺体・電源内蔵型を選びました。

そしてオーグラインLANで音の色艶をプラス。

気をよくして今度はハブの空きポートをLANターミネーターで塞ぐことに。

page.auctions.yahoo.co.jp

またまたこれがよく効きます。何故かS/Nの向上よりも音楽的なまとまりが良くなるんですよ。。。

 

petaさんも以前仰ってました。NADACに替えてもたいして音は良くならなかった。

その後、電源環境を整えて、インシュレーターを導入して、そこから本当に良くなってきたのだと。

 

4.いつの間にか「その人の音」になっている

当たり前のことですが、HD800を持参していくつかのブースでアンプに接続しても、家で聴く音とはまるで質感が違うんですよ。。。

おそらく、DACを持って行っても同じことだと思います。マルチビットDACだからとか、そういうことじゃないんです。

そのユーザー固有の音というのは、むしろDACやアンプ・スピーカーやヘッドホンといった機材の性能を引き出そうとして、オーナーが試行錯誤して配置した電源対策やケーブル類・インシュレーター・その他アクセサリー類といった、いわば脇役であるそれらひとつひとつの総体としてあるんじゃないかと思うようになりました。

 

細々とケーブルやアクセサリー類に金を使うのは無駄だという人は、オーディオがわかっていないどころか、広義で「趣味性」の意味そのものを理解していないのです。

大きな機器さえ同じであればみんな同じ音になったら面白くないじゃないですか。

オーディオから出てくる音を、音楽的に成り立たせているのはむしろこうした「小さなもの」の集まりだったりするんです。

 

冒頭のマス工房の音は確かにモニターサウンドとしては正しいあり方です。しかしCDPからHPA間のXLRケーブルはいわゆる汎用品で、電源はOAタップを中継していました。

音は良くても音楽的に味気なく感じたのはまさにこうしたところが原因だったりするのです。

あくまでこれはスタート地点に過ぎないのであって、ここから機材の本当の真価を引き出すのはオーナー次第であり、それがまさに「趣味性」なのであって、その試行錯誤の過程で、その人だけの音が「いつの間にか」作り出されているのです。