「音の色」について

今回のtopicは、概念が抽象的で正確な言語化が難しく、またこのことについて記された文章もweb上を見る限り非常に少ない領域です。

それでも、私がこれまで断片的にtwitterでメモ的に書き記した「『音の色』とは何か」について、私と同じような感覚を持っておられる方、あるいはその感覚を保有してはいないけれども私の発言の趣旨を理解して頂けた方がいるという手応えを掴むことができました。

こういったリアクションを踏まえて、そろそろblogで「音の色」についてまとめてみようかなと。私と似た感覚をお持ちの方がどれだけの割合でいるのか、未知数ではありますが、何かcomment等頂けたら嬉しく思います。

 

1. 「音の色=共感覚」ではない

「音の色」という言葉のイメージから、感覚を刺激する一定の音が何かしらの視覚、味覚、嗅覚といったものと結びつく「共感覚」のことだと思われるかもしれません。

しかし私はこのような、いわゆる「共感覚者」ではありません。

wired.jp

私の場合、特定の音に対して、それに対応する色が眼前に映し出されるわけではありません。もしそうであったら、もっと楽しいだろうなとは思ったりもしますが。

 

2. 背景色

一般的に、何か機器を試聴するときに意識が向く点というのは、解像度だったり分解能であったり、各帯域の音のバランスだと思いますが、私はそれよりもまず最初に確認するポイントがあるんです。

いわゆる「背景色」とでも呼べるような概念です。

私の場合、楽器固有の音色に特定の色を見ているわけではありません。それよりももっと基底にある、空間を照らし出す光(スポットライト)をイメージしたときに脳裏に表れる色、これを私は「音の色」と言っています。

 

3. モニターの「色温度」=「音の色」

この記事は、実は1年以上前に、いつか書きたいとは思っていたのですが、うまく説明するためのとっかかりがずっと掴めずにいました。

しかしつい先月、これはと思う情報を見つけましたので、少々引用させて頂きます。

purepure.wp.xdomain.jp

オーディオでは全体的に一様な色に染まる傾向があるので
モニタの色温度と同じように表現したことは何度かありました。
DAC7なら4500度、マルチビットDACだと5500~6500度、
ES9018なら8000~9000度くらいでしょうか。

 私は幼少の頃ブラウン管のTVやモニターが身近にあった世代で、中学を卒業する頃には液晶モニターに完全に切り替わった記憶がありますが、とにかく現代のモニターって「不自然に」明るくて、そして青味が強くて非常に疲れます。

モニター設定でブルーライト低減モードを最大に設定しないと、まともに直視できません。そしてこの設定でさえ、2時間も向き合っていると疲労を感じます。

不思議なことに、オーディオを通して聴く音にもこの感覚が当てはまるのです。

 

4. 本当に「青白い」んです

最近流行りのESSのDACチップですが、確かに繊細な表現や微弱音を引き出す性能はありますが、先述の「音の色」=ステージを照らす光が明るすぎて、それよりももっと私が大切にしているもの、歌い手の表情が見えてきません。

ちなみにAKMの最新型4497も、若干の質感の違いはありますが同じような傾向です。

むしろ「白さ」でいえばこっちの方が強いような。ESSの方は「青」が強い。

よく、ESSの音は高音が神経質で低音が細いとか言われてますが、それはコストをかけるべきところに投入せずにネームバリューだけで無理してこの高いチップを実装したからそうなったのであって、OPPO SONICA DACが登場する以前に、ガレージメーカーが普及価格帯で出したDACというのは総じてこのような音だったと思います。

SONICAに関しては、数度の試聴において、従来のこの価格帯にありがちなネガティブな要素はかなり解消できているなと感じました。それでも、先述の「音の色」があまりにも明るすぎ、青味が強すぎて、帯域バランスは聴感上それほどの偏りがないのにも関わらず、どこか緊張を強いられるリスニングとなってしまいます。

 

5. 彩度とコントラスト

では逆にモニターの色温度に例えてその値が低い(4000k~5000kぐらい)、WM8741やTDA1547(DAC7)搭載機の音の色ですが、自然な色合いよりは多少黄色っぽくなります。しかしこれが私にとっては非常に心地よく、過剰なメリハリがないので緊張を強いられず安心して音楽に浸れます。

この「メリハリ」とは音の外側の輪郭も要素的には含みますが、それよりも視覚的なイメージで言うところの「コントラスト」のことを指しています。

photo-mini.com

 映像の世界では高彩度・高コントラスト化が進んでいるようですが、私はオーディオの音の世界も同じ道を辿っていると感じます。

コントラストが高くなると、音の場合は繋ぎ目が見えやすいというか、ひとつひとつの音が何か独立な存在感を放ちながら鳴っていくようになります。メリハリが効いて試聴では映えるので一瞬いいんじゃないかって思ったことも初心者の頃はありました。といっても今でもオーディオ始めてまだまだ4~5年ってところですけどね。

2年目ぐらいまではまだまだこの感覚が育っていなくて、初めて購入した単体DACはES9016を搭載したNorth star Design Intensoでした。

(発売から4年で生産完了となりました。近年の製品サイクルは本当に短いです。)まぁ、それでも2年は使い込んで色々学べたこともあったので。

 

結局、私にとって自然な温度感とコントラストというのが、モニターの色温度で言うところの6000k程度であり、PAGODA DACを購入した際に偶然ベストマッチした(国内代理店がなく試聴する手段がない)んです。 WM8741まで色温度が下がると、表情は見えやすいんですがコントラストが弱く、細部の描写がくすんでしまうこともあるかもしれません。

 

6. 今の時代は何でも「明るすぎる」と思いませんか?

www.itmedia.co.jp

多くの国際基準では、色温度の基準は6500k(ケルビン)となっており、これがもっとも自然昼光に近いということになっている。

 

だが実は日本だけが違っていて、慣習的に9300Kが標準となっている。

 

日本では、照明のほとんどが蛍光灯だ。蛍光灯は電球と違って色温度が高いので、9300Kを白としたほうが馴染みやすい

 

店内の照明がどこも明るすぎて、その明るい店内でデモ受けするようにテレビの発色は過剰にクッキリハッキリ、白は異常なほど真っ白(というか青い)。その光源の強さは尋常ではないと思っています。。。

今のオーディオ製品の音も、大手国産特有の「眩しいほどの明るさ」が私にはどうも合わなくて。不思議と、どの世界も流行りのスタイルって似てくるんでしょうか?

 

3か月ほど前、秋葉原HiFi堂にnemeさんとふらっと入ったとき、修理完了して明日ユーザー宅へ出荷されるというPHILIPS LHH700(1991年発売。TDA1547搭載DAC)と、アンプは何か忘れましたが、スピーカーはYAMAHAのNS-1000Mという組み合わせで鳴っていたので、しばらく聴いておりました。

PHILIPS LHH700の仕様 フィリップス

YAMAHA NS-1000Mの仕様 ヤマハ

 

「これが90年代当時の『音の色』なのかもしれない」ということを、ふと考えることが今でもあります。

確かに細部の描写はもう少し求めてしまう部分はあります。けれども、「音の色」の塩梅だけで見れば、現代機器よりもLHH700の方が私の感覚に合っています。

それでも、こういった発売から20年も過ぎてどれだけのユーザーを経たのかわからない機器を購入することはリスクが高いので、実際にはどうしても難しい面が出てきます。。。