ブランドに、感性を依存せず

E4UAさんにHD800用ケーブルの作成を依頼しました。

e4ua.jp

昨年はDACDDC、それに接続するケーブル等の上流の整備を集中的に行っていましたが、最後にヘッドホンケーブルという言わば最下流に目を付けました。

近年は銀ケーブル特有の音色に惹かれてシステムに導入する数を増やしていく傾向にありました。

Wireworld Gold Eclipse 6 RCA

oyaide Continental 5S V2 (信号線に銀・電源線に102SSC)

PAD AC Tantus(金・銀・銅・プラチナのハイブリッド構造)

オーグライン0.3mm×4芯 HD800ケーブル

昨年12月時点で、この4本の銀ケーブルがシステムに繋がっておりました。

 

しかし、結果としてやや低域の量感が軽くなったり、上流の整備が整い始めると今度はその癖が過剰に感じたり、楽曲本来の音楽性を引き出すという面からは遠ざかっているのではないかと感じることがありました。

なので今回のヘッドホンリケーブルにおいて、102SSCという最新の銅導体を選ぶことにしました。

この導体の本質は、これまでの「線材純度向上競争」とは視点を変えて、「物性的にストレスのない導体」にすることで、銅本来の良さを引き出すことを主眼に開発されたのだと思われます。

av.watch.impress.co.jp

これを16芯編み込み(仕上がり後ケーブル長2m)でオーダーしたことにより、非常に制作の手間がかかる仕様でお願いすることになりました。。。

そのため線材の価格自体は約18000円ですが、制作費用が通常の2倍以上となり合計額では約115000円の支払いとなっています。

ヘッドホンケーブル1本に対して、着手から完成まで丸々2~3日を要するとのアナウンスがありまして、「これは大変なものをお願いしてしまった」と。。。

 

支払い完了から2週間後、そのケーブルは我が家に到着しました。

 16本も線材が投入されているとは思えないくらい、しなやかで曲げやすく。

テフロン被覆から透けて見える導体の美しさが、102SSCの質の良さを予感させてくれます。

HD800側プラグは本来このような黒いゴムブーツはありませんが、脱着のやりやすさを考慮して付けて頂けたのでしょう。私はこのような細かい注文はしていないのですが、こういうさりげない配慮には感心いたします。

 

これまで1年半ほど使用していたオーグラインケーブルは、標準ケーブルよりも音抜けが良く、色彩も豊かな点が気に入っていましたが、空間の奥行が浅くなるという欠点がありました。

HD800らしさをある程度失っても、その音の色合いの良さを買っていて使い続けた、というのが実情なのでした。

今回のリケーブルでは、「まず基礎特性を、HD800本来の良さを、100%引き出したい」という観点から、導体量を極限まで増やして情報量と空間再現性を向上させることを目的としました。何と2mのケーブルに43mの線材が使われていることになります。。。(2.7×16=43.2m)

*編み込むことで長さが縮まるので、その分を計算に入れる必要があります。

 

結果的に、その目的は十分に果たせたと実感しています。

さらに、音の定位が抜群に安定するようになりました。HD800というのはこれまで「音抜けはクリアであるが、定位は若干滲む、むしろそこが空間の広さを補助的に演出している」ヘッドホンだと思っていたのですが、102SSC×16芯編み込みケーブルによって、どこかFocal Utopiaの揺るぎない定位感に少し近づいた印象すらあります。

システムにはまだ3本の銀ケーブルが接続されていますが、最下流に当たるこのケーブルの支配力が強いのか、以前はPAD AC Tantusの影響が強かったのですが、今ではそれほど目立たなくなりました。

ということで、「銀に頼らずに楽曲本来の音楽性を引き出す」ことが今年の目標となりました。

 

さて、102SSC16が到着してから3日後のことです。

以前からtwitter上で交流のあるbergamotさんから、HE1000とヘッドホンケーブルをお借りすることになりました。

このケーブルは、何と4N純銀16芯編み込み仕様となっています。

www.bergamotflavor.com制作工程を読んでみると、これは私のような素人が手を出すべきではない作業であることがすぐに分かります。

本業の合間に制作されているので、1カ月に1本生産するのが限界で。

にもかかわらず、「趣味」のレベルを超越した、妥協を許さない精神が根底にあるのです。

 

そもそも、私が市販のサードパーティ製HD800ケーブルを今回の候補に全く入れず、このような形で仕様検討を重ねオーダーメイドで制作して頂くことにした理由は、10万円以上も値が張るのに、クオリティや見た目において満足できるものが既製品で見当たらなかったからです。

一般的に、高級ケーブルというのは導体の量よりも厳重なシールドを施すことで外来ノイズの飛び込みを防ぐことを優先した設計であることが多く、S/Nは向上しますが音の解放感や抜けといった要素は減退したり、音が大人しくなる、躍動感が失われるという傾向が見られます。

対して、今回のような編み込みケーブルというのは、GNDが縦横無尽に張り巡らされることで外来ノイズと輻射ノイズを吸収するシールドの役目を果たします。

極限の導体容量を確保しつつ、なおかつノイズも打ち消してくれるので、音のエネルギー感を失うことがありません。しかも編み込むことで取り回しが非常にしなやかで、曲げ癖が付くこともなく。プラグ付近の収縮チューブのみで外装はなしという仕様なので、非常に軽量で経年によるヘッドホン端子側への負担もありません。

まさに、良いことづくめです。

 

この年末年始は、ひたすらHD800+102SSC16とHE1000+Seirios ag16を交互に聴くことを繰り返しておりました。

① HD800とHE1000(ヘッドホンの特色の違い)

②102SSC16とSeirios ag16(同じ16芯編み込み仕様のケーブルにおける、銅と銀の線材による音の違い)

それぞれの要素を(できる限り)分けて記述していきます。

 

HE1000は非常に色彩感豊かで、濃い表現を得意とします。

平面駆動型のドライバーが非常に大型なので、HD800よりさらに空間が広い。これは現在市場に存在するヘッドホンの中で、一番広いと思います。

元々の録音において空間が狭い場合でも、常に一定の広さにまで横幅を拡張するという反則技を見せつけてくれます。しかも全ての位置のおいて、厚く濃い音です。

HD800の場合、発生した1点から放射して空間を満たしていくという空間形成です。

HE1000よりは横幅は狭いけれど、音の前後関係であったり、重層的に折り重なっていくイメージが掴みやすいという特色があります。

唯一のweekpointと感じたのは、低域のスピード感。高速ビートが捌き切れないというか、前と後ろの音が繋がり気味に流れる場面が気になりました。

 ダイナミック型ドライバの方が、歯切れの良い低域は再現しやすいようです。

 

銀はとにかく明るく、艶があり、華やかですね。私が今年の前半期までに求めていたのは、まさにこの音なのです。

銀は、銅と比較すると低音が少なくなる傾向がありますが、これを16芯という物量でカバーしてしまうことで、まさに死角なしと言ったところでしょうか。

ちなみに102SSCが m / 400円、4N純銀が倍の800円です。

つまり(もう考えることをやめた

 

オーグラインと比較すると、銀はもっと高音の煌きは強いように感じます。

また、オーグラインは全体をサラッと透かしてしまう部分があり、粘りのある再現とは異なります。

白い光を当てている銀 / 黄色が混じったオーグラインという感覚ですね。

ちなみにオーグライン+pt16という神をも恐れぬ所業が(

 

102SSC16を聴くと、一気に落ち着きを取り戻した感じになります。

HD800標準ケーブル自体が銅+銀メッキ線なので、開発で想定されていた音よりも、もっと高音の脚色は抑えられて地味になってしまったかもしれません。

このケーブルの一番の特色は「音の柔らかさと芯の強さを両立している」点にあります。

どうしてもHD800の低音は量感が不足して「軽い」と評されることが多かったのですが、ようやくこの最大のweekpointを解消することができました。

元々のヘッドホンの特性としてダイナミックレンジが広く、空間の再現性も高いのでスケールの大きい再生は可能なのですが、前述の低域の軽さがどうしても足を引っ張ってしまっていたのです。今回のリケーブルで、HD800のドライバー自体が持つ本来のダイナミズムを再現できるようになりました。

 

 

思えば、去年から私のシステムは

「交流のある方から買い取らせて頂いた」(DAC

「仕様の相談を重ねて制作して頂いた」(ケーブル等。4か所ぐらいありますね)

ものばかりになっています。

 

最優先する事項は、やはり音の良さであり、音楽性をきちんと再現できることなのでありますが、それでも近年の私はなるべくこうした「人の縁」があれば、そちらを優先しようという考えになっています。

人と、モノを通じた交流を大切にしたい。

私は、モノを作るだけの知識も技量もないけれど。せめてこうして文章にして、少しでも伝えることができればと。

 

そして、なぜか結果的に市販品より良い結果に繋がっているのは、不思議なものです。

 

E4UAさん、そしてbergamotさん、今回は誠にありがとうございました。

また何かご縁がありましたら、そのときはよろしくお願いします。