"LA SOURCE"

今回、非常に長文となってしまったので各所で目次を付記することにしました。

 

1. JCAT USBアイソレータ導入

 

 最近はDACに信号と電源を入力する手前の部分に注力しています。

今回は秋葉原のオリオスペックにてJCAT USBアイソレータを購入しました。

www.oliospec.com

USBケーブルが2本必要になったので、前段はオヤイデ Continental 5S V2を選定。

また銀線が増えました・・・

 

結果的に、USB信号と電源の再生成を3回も繰り返す構成になってしまいました。

(ipurifier2→JCAT USBアイソレータ→iONE)

ipurifier2については、iONEの手前に挿入すると音楽性が減退する結果となっています。

JCAT USBアイソレータのregenerateの質がipurifier2よりも高いということの証左でしょう。

また、現在はJCAT USBアイソレータの手前に挿入していますが、音楽性の減退は認められないが明らかな改善とも言えない、何とも微妙なラインに留まっています。

このあたりは経過観察が必要なようです。

 

 2.DAC探しの旅

 

さて、MHDT Lab PAGODA DACを導入してから半年が過ぎました。

それまで使用していたNorthstar Design Intensoも決して悪いものではないのですが、まるで出番がなくなっているのが現状です。

IntensoはESS製チップながら色彩感が良く出て、なおかつ低域の厚みも備えた、価格から考えると結構優秀なDACだと思いますが、高域のエネルギーバランスが強くて子音がどうしても刺さるのが難点でした。

電源BOXにJ1project PT2PDGを導入する等、帯域バランスの抑制を中心にテコ入れを進めていきますが、やがてこれにも限界が訪れます。

naspecaudio.com

価格帯としても10万円台前半のエントリークラスだったので、基本性能を向上させたいという欲も出てきました。

Intenso購入から2年後、新DAC導入に向けて様々な機種を試聴して回る日々が1年に渡って続きます。

私自身、ここまで長期化するとは思っていませんでした。

現在市場を席捲しているESSやAKMのチップを搭載したDACを中心に視聴していましたが、どれも一様に透明感があり綺麗な音ではあるけれど、何故か購入する気にはならなかったのです。

そして家に帰って自分のシステムの音を聴くと、試聴した時に欠落していた「何か」がそこには宿っていることに気が付きます。

帯域バランスは試聴したあのシステムの方が整っているのに、どうして高域もうるさくて刺さって、低音も明らかに持ち上がっている「この音」の方が楽しいのだろう。

「私にはこのレベルが分相応なんじゃないか。」なんて思いが頭に浮かぶこともありました。

 

転機が訪れたのは2016年8月。

Questyle CAS192D-G/LTDを視聴した日です。

当時の記事は簡潔な更新で終わらせてしまっていましたが、振り返って捕捉しておきます。

rays.hatenablog.com

結局これは最終的には購入には至らなかったのですが、試聴に奔走していた1年の中では一番心惹かれたDACでした。

一枚薄い膜をフィルターかけられる感覚はあるんですが、とにかく音の色が良く出ていて、初春の優しい光に照らされているような、そんな音だったのを覚えています。

 

対比として、2017年3月に試聴したexasound e22 mk2を挙げます。

「神経質な面はないのに、表情が見えない」んです。

試聴ソースに東方ロックアレンジサークル「サリー」の楽曲を持ち込みましたが、

「こんな冷静沈着なハードロックは、かえって不自然だ」と思わざるをえませんでした。

情報量はQuestyleのDACよりも多いのですが、それが私にとってはあまり重要ではないことに気が付いた瞬間でもありました。

「サリー」 公式サイト 同人音楽サークル サリーオフィシャルホームページ

 最終的に、私は現在使用しているPAGODA DACを視聴もせずに購入する決断をしました。

1年を要して、「これ以外にない」というものに出会えなかったのだから、今の流行となっている音は私の求めるそれと完全に方向性が異なっている。

ならば、もう「人の縁」に頼ってみようと。

(PAGODA DACは、あるtwitterのフォロワーさんから勧めてもらい、買い取る形でお譲り頂きましたものです)

 

3. オーバーサンプリングとデジタルフィルター

 

PAGODA DAC導入以降については過去記事で度々触れていますので再掲はしませんが、このDACは特に目新しい技術は活用されていないように思います。

現在主流となっているのは、デジタルフィルターを利用して入力データを192kHz等にオーバーサンプリングする方式ですが、PAGODA DACはNon over samplingであり、デジタルフィルターも使用していません。

ではなぜオーバーサンプリングするのかというと、一般的なCD音源:16bit / 44.1kHzでは、高音になるにつれてD/A変換するための基準点が少なくなっていくので、時間軸において微小な遅れの発生が避けられなくなります(これをジッターノイズと言います)。

音を不自然に硬くしたり、ザラついた質感を生み出す原因となる「らしい」ですが、高域においてもサンプリングの数を増やして、曲線に近づくように滑らかに繋げることでこれを回避する、そのためのオーバーサンプリングの手法であると私は理解しています。

 

私にしては珍しく技術論的なことを書いてみましたが、では実際にNOSのPAGODA DACの高域が荒いかと言ったら、全くそんなことはないんですよ。

むしろ、長年の悩みだった子音の刺さりが解消されたのです。

エッジを意図的に丸められた気配がないのに、刺さらない声をHD800で初めて聴くことができました。

 実は長年悩まされた発声の刺さりについて、根本的な原因は帯域バランスの偏りとは関係がなく、実はデジタルフィルターを使用することにより音の立ち上がり、立下がりが鈍ること(プリエコーとポストリンギング)が要因ではないかと最近は考えています。

 

*デジタルフィルターと子音の刺さりの関係については、詳しくは次回の更新で取り扱います。

 

4.スペックと音楽性

 

年2回のHPFESを含めて、この3年で視聴した機材はおそらく100は越えると思いますが、結局のところ「ある一方向からの理論なんて、まるで指標にならない」ことがよく分かりました。

例えば「オーバーサンプリングしているから高域の歪が少なくなる」というのは、確かにその点から言えば正しいのですが、扱う周波数帯域が広くなれば、それだけ筺体内で高周波ノイズが発生しやすい環境となります。

その対策が不十分であれば、結局は神経質で余裕のない音となって現れてしまうものです。

 

デジタル技術の進歩は確かに目覚ましいものがあり、最新の DACチップ(ES9038・AK4490)の公表スペックはもはや測定限界の天井に届きそうな気配さえ感じられます。

しかし「静特性」を重視して設計された機材からは、私にとってはその多くは音楽性が減退していると感じられるのです。

無論、これは両立できるのがベストなのですが、現代の技術をもってしても片手落ちになってしまうようです。

 

5.「やっぱり、聴いてみないとわからない」

 

カタログスペックって、聴感の印象と一致しないことがよくあるんですよ・・・

特に最近はS/Nが目覚ましく向上していて、90年代~00年代前半の製品から平均して10~15dbぐらい良くなっているんですが、最近の製品を聴いてみたらギスギスしてキツイ音でノイズっぽい・・・なんて感じたことがある人はそれなりにいるような気がします。

ES9018が急速に流行した最初の時期(2013年くらい?)は、割とこんな音を出すものが多かったような。

 

dbは対数表記であり、12db=4倍ということは、100dbが112dbに向上しただけでも相当音が良くなるんじゃないかって想像できてしまうのですが、実際の出音には色々な要素が絡み合ってくるので、その機材が本当に良いものなのかは「聴いてみないとわからない」のだと。

 

前回のHPFESで印象に残ったのは、EARのAcute ClassicとHP4の組み合わせでした。

 

セットで150万円くらいでしょうか。

解像度や情報量・音の分離といった要素では全く見合ってないけれど、そんなことはどうでもいいと思ってしまうほど音楽としての一体感、説得力に溢れています。

S/Nが90db、だからそれがどうしたってことですよ。

聴いた後で知りましたが、Acute ClassicもWM8741搭載DACでした。

やっぱりこのチップには、他とは違う何かがある・・・?

 

6. "LA SOURCE"

 

資本も人手も圧倒的な大手国産のDACの音が、出汁を取り切った後の抜け殻で(気に入っている方はすみません)、海外の小規模メーカーが、たったひとりで音創りを続けてきた製品と、音楽性において圧倒的に引き離されてしまっていると感じます。

やはり最後はヒアリングが重要であり、それよりも大切なのは設計者自身が日常的に音楽と親しんでいるか、それに尽きると思います。

ある理論に従って設計しても、それによって引き起こされるデメリットが最終的な出音において足を引っ張ってしまうことが常に起こりうるのがオーディオの世界なのですから。

 

私が過去によく閲覧していたblogから、ひとつ引用してみます。

dynaudia.blog26.fc2.com

 

「解像度が高い」と言っておけば、それだけでオーディオ機器の優劣を言い切ったようなつもりの人もいる。

 

 こういう人はまずHPでスペックを見て、それから視聴するという流れだと思うんですよね。

私は、もう公表スペックは視界に入れないようにしています。かつては私もそこを読んでいたクチなので、読んでしまうと少なからず先入観として植え付けられてしまうから。

そんなことで、本当に良い製品があるのに見逃してしまうのはもったいないですよ・・・

 

結局、普段聴いている音源を自らの感性に沿うように再生できるか、それに必要な要素は何か、ということであって、そこに「高解像度」が不可欠な方もいれば、そうでない人もいる。それだけのことだと思います。

 

人それぞれ、思い入れのある音源を楽しむための、「手段としての」オーディオなんです。

私の場合、DDCとUSBの電源周りに投資するようになってから、信じられないぐらい音楽性を引き出すことができるようになって、本当に毎日聴いてて楽しくて・・・。

でも、これも実は私にしか適用できない手法かもしれません。