報いるということ

Final D8000ファーストインプレ記事の最後にて

 

rays.hatenablog.com

リケーブルについては純正シルバーコートもありますが、その前に試してみたいことがあるので先方と打ち合わせ中です。

 今回は、その答えについて書くのがメインとなります。

 

 これまでHD800に使っていた102SSC16芯編み込みケーブルを、製作者のE4UAさんに依頼してプラグをD8000用に改修して頂きました。

 

HD800にて使用していた際のインプレは以下過去記事になります。

rays.hatenablog.com

D8000標準ケーブルとの比較になると、意外にも低域の量感は標準ケーブルの方が多く感じます。

その代わり中域がよりフォーカスされて、元々暗めな雰囲気だったのが明るくなります。相対的に中高域の量が増えると、全体の雰囲気が陰性から陽性になる典型的な例です。

102SSCの素線としての柔らかい表現は、そのままD8000でも発揮されています。ヘッドホン自体の描写能力や帯域バランスがHD800よりも向上しているので、素線の差が明確に感じられます。やはり音像輪郭のキレ味ではなく弾力やグルーブ感を引き出す方向です。

音楽全体としてのまとまりも、102SSCの方が好みです。標準ケーブルだと低域だけ別動隊で鳴っている印象があります。

 

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 去年の12月に、HD800リケーブルについて仕様検討を重ねていた際に、E4UAさんからの返信で以下の文章がありました。

16芯の編みこみはとても時間のかかる作業でもあり、これが全長200cmだと2日か3日がかりでの作業になります。

 

当然作業工賃も通常より割り増しですしトータルで10万円超えました。それでも「自分にそれだけの時間を割いてもらっている」という事実があるわけです。

このような実感って普段の日常生活の買い物では湧いてこないものです。作り手と買い手の間に、売り手となる人や企業が介在して、それが見えないような構造になっているから。

 

「これは大事に使わなければならないものなんだ」

使ってみて好みに合わなかったから、もしそういう結果になったとしても、簡単に放り出してはならないんだと。「自分の音」にしなくてはと、そう思いました。

結果としては、最初から非常に好みな音として鳴ってくれました。しかしそれは今私が書いていることの本質ではない。

 

今後のメインはHD800ではなくD8000です。このケーブルを今後寝かせてしまうのはあまりにも寂しいと思い、プラグの移植によってこれからも付き合っていきたいと考えたのです。

それが、あのとき私に費やしてくれた労力に、報いるということではないかと思うのです。

 

永くお使いただけますと嬉しく思います。

 

はい。もちろんですとも。

JPLAY FEMTO -DLNA回帰という選択-

JPLAYがver 6.2から4年振りに7.0へ更新です。

http://www.jplay.info/

 

f:id:les2134:20181120110947p:plain

ver.6.2ではDACLink 700Hz再生安定を目指しユーザーが試行錯誤する様子がよくみられました。「FEMTO」と冠された今回のver7.0では上限が1000Hzへ拡大されましたが、特に何の工夫もなく安定して再生することができています。

(ちなみにシングルPCモード、ネットワーク再生という環境です)

 

6.2→7.0で特徴的な変更点は

・OpenHome→DLNA

・JPLAYStreamer→FEMTO Renderer

・外部サーバー(MinimServer等)との組み合わせで動作→FEMTO Server

RendererとServerを自社開発したことが音質向上のポイントであり、高DACLink再生安定に貢献しているようです。

これについては思い当たることがあります。6.2の時代にJPLAYStreamerを介さずにfoobar2000でASIOドライバーに適用して再生した方が、DACLinkは高い数値でも安定する傾向がありました。(170→350)

つまりPC側の処理能力と、オーディオに無関係なプロセスの割込み処理問題の他に、ServerとRendererの相性問題が存在していたようです。

ただし音質は低DACLinkでもJPLAYStreamerの方が良いという結果でした。

 

操作性、運用で問題となるのは

・OpenHome→DLNAへの変更 だと思います。

コントローラーはPC上のkinskyという手もありますが、タブレットのBubbleUPnPを活用してPCの負荷を減らす方が良いでしょう。

そしてタブレットのスリープ移行を解除、もしくはできるだけ長い時間スリープに入らない設定にする必要があります。BubbleUPnPにはバッテリーセーブモードがありますが、初期設定ではOFFだったと思いますが適用しない方が良いでしょう。

リビングオーディオでスピーカーから音楽を垂れ流しにしていて、一度プレイリストを組んだらその後はタブレットから手を離している時間が長いような方は必須の設定となるでしょう。

 

もうひとつ、FEMTO ServerがFolder Viewにしか対応していない。私はこちらの方が問題ですね。

Libraryを開いてすぐにアルバムアートがタイル表示されないし、ワード検索することもできないので文字だけ追ってスクロールして目的の楽曲を探すことになります。

それでも6.2の時代とは相当な音質差が認識できてしまったので、今更戻すこともできない状況にあります。。。

 

今回のJPLAY更新において、音質について詳しく書いてなかったですが、つまりはPCがようやく音楽的にまともなネットワークトランスポートとして使えるレベルになったということです。

具体的な要素というと空間表現の抜けの良さ、高域の伸び、といったところですかね。

 

*今回の更新は若干内容薄めです。というのも、JPLAY日本語デスクがフォーラムの内容の流出に対して厳格な措置を行うと公表しているからです。しかしどこからどこまでがOKなのかいまいち判然としないので、記載していた記憶がないものでもどこまで踏み込んで書いて良いかわかりません。一定期間が過ぎた後この記事も削除する可能性があります。

逢瀬 WATERFALL

前回記事で少し触れた逢瀬について語ります。

ココトンカワイイヨココトン

秋のヘッドホン祭での展示構成は以下です。

ause-audio.com

音質評価の前に、まずはWATERFALL Integrated 250(以下WF250)について紹介です。

デジタルボリューム機能付きDAC+パワーアンプという、これ一台あればスピーカー or ヘッドホンでかなり高い次元まで行けますよ、的な製品ですね。(ヘッドホン出力も付いています)

パワーアンプ部のNcoreも素晴らしいですが、個人的にはDACとしての優秀さを評価しています。

情報量と分離、高S/Nで言えば定価の倍以上80~100万クラスと比較しても負けてないと思います。MYTEK Digital Manhattan DAC IIからオーディオ的なケレン味を抜いた感じ、というとわかりやすいかもしれません。このDACは試聴したことがありますが、基本性能の高さとオーディオ的な音作りの巧さが共存していました。爽やかで晴れやかと言いますか。

ハイエンドオーディオ的な高音の僅かなアクセントを上手く出している感じがします。

WATERFALLシリーズのコンセプトのひとつに、ハイエンドオーディオ的なある種の味付けを意図的に排除するというものがあります。ある意味でそれは見事に実現されているということでしょう。

色彩感はやや淡色で旭化成DACの気配が漂ってますね。透明感はありますが若干色味は青に近いので、そこだけ私の好みからズレてます。私は少しくすんだ感じであったり、黄色に近い方を好みます。ちなみにESSはもっと青が強いです。

 

システム全体としての印象に移ります。2種の経路の展示のうち、まずはハイエンドの方から。

去年も逢瀬の音はヘッドホン祭で聴いています。DAC自体は同じなので、それより上流の変更に対する出音の変化というのがポイントとなります。

(トランスポート~DDCDACに信号を入力までの経路を上流と定義します)

私もこの1年ほど、この領域に対してはそれなりに気を使ってきました。AXIOMTEK製工業用ファンレスPC(Win10Pro搭載)を始めに、JCAT USBアイソレーターがその代表例で、DDCのiFi audio iONEも、XMOS基板で同軸出力はガルバニックアイソレーションが施されている仕様となっています。接続する2本のUSBケーブルもあれこれ試しました。

(最終的にはNordost Heimdall2とWireWorld Platinum Starlightで固定)

しかし逢瀬が投入してきたデジタルコンバータ試作機は、こういった従来の製品の効果を軽く凌駕しています。私が上記の対策で向上を感じた点というと低域の安定感というのが第一です。中高域の神経質さは多少軽減されてますが、やはり効果が大きかったのは低域方向です。

逢瀬のデジタルコンバータを経由しての印象は、まず中高域の質感です。これは今までのPCAudioでは実現できなかった「音像周辺の気配感、空気感」が漂っています。どこかアナログ的なイメージさえ浮かびます。

従来のPCAudioというのは、中級クラスのCDプレイヤーと比較して情報量が多く、音像の滲みが少なくてキレが良く、低音の土台の安定感があるという方向です。私の環境もだいたいこのレベルです。少なくとも普通に手が届く範囲の価格帯のCDP(40万ぐらい?)から出る音よりは良いよね、というところまでは到達している感じはあります。

逢瀬のデジタルコンバータはこの上を行きます。世の中にはCDプレイヤーのうちDACとトランスポートで筐体を分けて、トランスポート側だけで100万円を超えてしまうような機器がありますが、そういった機器が存在する理由が何となく理解できるかもしれません。

こういった機器の試聴経験は流石に少ないのですが、印象的なものがひとつあります。

ぐっちょんさんに連れられてダイナミックオーディオ5Fで聴いたORPHEUSのSACDプレイヤーの音です。価格750万円でトンデモなことになってますが。。。プリとパワーアンプはConstellation Audio、スピーカーは803D3という構成でした。

このシステムで感じた音というのは、音像周辺に、ふわっと漂うような微粒子感がさらに外側に存在するということです。そして高域に僅かに上品な脚色があります。いわゆる「ハイエンドの薫り」というアレです。CHORD DAVEにもこの特徴は存在します。

逢瀬のデジタルコンバータを経由した音というのは、上記から「高域の脚色」を取り除いた音です。つまり音像周辺のさらに微細な情報が掘り起こされているということであり、「ハイエンドオーディオらしい音」のひとつの条件をクリアしていることになります。

 

システム2「標準構成」と比較してみます。トランスポートとして用いるプレイヤーはCD専用機ではなくて一般的なDVDプレイヤーでした。それでもWF250の内部に簡易的な光ブースターが搭載されているので、トラポの質をある程度カバーできるということにはなっています。

それでもこちらの音は、ハイエンドの方と比べると誰でもすぐに判断できる明確な音質差があります。音像が輪郭で縁取りされ区切られた感じがあり、中高域の質感に僅かな硬さの残る音です。

 

-上流への投資は音楽性の向上に直結する-

私がDACよりさらに上流の部分をあれこれ試してたどり着いた結論です。JPLAY購入後はPCがネットワークトランスポートとしても機能するようになったので、LANケーブルやLANアイソレーター、ネットワークハブの吟味といった部分もこの領域に含まれます。JPLAYについては6.2→7.0アップデートで飛躍的な音質向上が認められましたので、これは次回記事にて詳述します。

逢瀬のデジタルコンバーターは明らかにこの延長線上に存在し、今までのオーディオアクセサリー群で細かくひとつひとつの要素を埋めて継ぎ足ししていく面倒さから解放してくれるかもしれません。

ネットワークプレイヤーで有名なSforzatoの音質向上ノウハウについて書かれたページ

http://www.sfz.co.jp/networkhowto.html

いろいろな対策ですが、1つだけやってみても効果が薄いと感じるかもしれません。ただ、万全の対策を取った後1つ外してみるとその効果がとても大きかったと感じると思います。また、いろいろやってみて最後の1個がとても効果的だったと感じるかと思います。ノイズ対策は嵐の日に1つ1つ窓を閉めていくような作業だと業界の大先輩がおっしゃっていました。確かにあちこち窓が開いていれば1つくらい締めても効果は薄いですが、最後の窓を閉めた途端に思い切り静かになったと感じられるでしょう。

私もまだまだ道半ばです。趣味的にこうした詰めの作業が楽しいこともまた事実ですが、当初想定していた予算よりいつの間にか膨れ上がってしまった、というような方もきっといることでしょう。

逢瀬のデジタルコンバーターはトランスポーター自体に多少問題があっても、それを一定以上の品質に「主体的に」担ぎ上げてくれるものであって、従来のオーディオアクセサリーのような「補助的な」効果に留まるものではないと感じました。それだけ効果の度合いが違います。

そして末恐ろしいのはこれが「構想第一試作機」であると。まだまだ改善余地が残っているとのことで。。。完成品はこれよりずっと良くなるというお話でした。

私は技術的な面についてはあまり明るくないのですが、お話を伺ったところでは現在市場にある製品は「絶縁」するところまでは目を向けているけれども、そこから信号を正しく再生成することであったり、さらにその先の部分に対しては十分ではないとのことです。後は単純にケースの大きさの制約による物量の不足といったところでしょうか。

なので価格はWF250までにはならないけれど、現時点では20万円あたりになるでしょうというご回答でした。ケースの大きさもDACと合わせてあるので、オーディオアクセサリー的な脇役位置でなくてDACとスタックして見栄えも良くなるような感じになりそうです。

私は機材を重ねて使うことは振動の観点から絶対に避けるようにしているので、現時点ではちょっと置き場所が。。。

来年秋までに何とかお迎えする場所を確保したいと思います。

(オーディオラックが天板とポール継ぎ足しで増設できない構造なので、参ったなぁ・・・

 

P.S.

記事の本筋から逸れますが若干追記です。

前回の記事「D8000ファーストインプレ」で

逢瀬でUtopiaとD8000を両方聴くことが出来て、より可能性を見出せたのがD8000だった

これについて補足しておきます。

Focal Utopiaは環境を良くしても結局中高域の硬さが基本的な傾向として残ると感じました。

ベリリウムという素材が、物性としてそういう特性を持っているのかもしれません。

D8000の方が低域のスケール感があり、中高域はそれほど神経質にならず、おおらかな鳴り方です。音楽性として自分の求める方向は明らかにD8000の方が近いと判断し、この段階で最終的にUtopiaを選択肢から外すことができました。

Final D8000 First Impression

 HD800を4年間使ってきましたが、ようやく更新です。Final D8000が今後のメインとなります。

前回の記事でFocal Utopiaをお借りした感想を書きましたが、結果的にはUtopiaは選択肢から外れることになりました。

www.bergamotflavor.com

環境の粗を容赦なく曝け出してしまうUtopiaですが、特に高域の質感については非常に敏感なのでした。Utopiaをメインに据えるのであれば、DACと電源系にも相当奢ってやらないとバランスが取れません。

特に「違和感を無視して長期間聴き続ける」ことができない私には死活問題となります。システム全体の底上げを行うまでの潤沢な予算は持ち合わせておりませんし。。。 

よって、情報量は同等クラスに備えていながらも少し方向性の異なるD8000に希望を見出すことにしたわけです。

 

さて、このD8000はヘッドホン祭の会場特売で購入しました。

祭の特売は整理券をもらって指定時間に入場する方式になっていますが、私は昼過ぎに中野に到着したので15時以降の入室フリーまで待つことにして、それまでは各フロアで試聴して回っておりました。

といっても、半分ぐらいの時間は逢瀬で試聴したりyohineさんとお話していたような気がします。。。

ause-audio.com私が近年注目している新進気鋭のメーカーです。かなりユーザー目線まで下りてお話して頂けるので、他のブースとは違った空気感もあります。

逢瀬については次回記事で詳しく取り上げます。

 

話を戻して購入の経緯です。

15時の特売会フリー入場で特価品リストの一覧を確認するとFinal D8000がありました。

在庫は2台で既に売り切れているだろうとは思ったのですが、駄目元でスタッフさんに確認してみたら何と現物が出てきました。定価388000円が特売で318000円だったので即決です。

先ほどの逢瀬でUtopiaとD8000を両方聴くことが出来て、より可能性を見出せたのがD8000だったのも後押しするポイントとなりました。

 

-Sound Impression-

低域の再現性は現在あるヘッドホンの中で間違いなくトップでしょう。

HD800が薄く軽い音に聴こえてしまいます。そしてUtopiaでさえここまで深い、本当に低い帯域までは出てないと思います。

ただし輪郭の描き方はダイナミック型であるHD800やUtopiaの方が明瞭です。D8000は音像周辺の空気を一緒に取り込んでくるような、やはり平面駆動型の鳴り方でしょう。

プレーナー型を例に挙げてHiFiMAN HE1000でもこのような傾向はありましたが、こちらは音のスピード感が遅い印象で速いビートの刻みに対して前の音と後ろの音が団子繋がり的に流れていく感じでした。そしてやはり実在感や重み、レンジの広さといった点でD8000とはかなりの格差を感じます。

D8000の低音は量感がありながらも立ち上がりがとても速いので、HR/HM系の音源ではD型のキレの良さとはまた違った魅力があります。

 

中域は、この量感たっぷりな低域に埋もれずしっかりと主張があるのでバランスが取れています。Vocal表現はHD800で時折感じる子音のキツさがD8000ではだいぶ和らいでいるので聴きやすいですし、Utopiaでは若干冷静に感じる表現をより音楽的に寄せてくれる印象です。

 

高域はUtopiaほど敏感ではないものの、やはり質感は環境のグレードが反映されるように思います。現時点で自分のシステムではほんの僅かなピーク帯域が常時見えている(聴こえている)状態です。音楽的に邪魔をしない範囲ではありますが、ここは時間をかけてでも解決していきたい項目ではあります。

 

総評としてHD800よりはあらゆる点でランクが3段階ぐらい上(ただし空間の絶対的広さは音源による)で、Utopiaほど上流によって破綻するまでは極端な方向へ行かないので、ちょうどいいバランスだと感じています。

何より全域で音の密度が濃くて実在感が強いのが特徴で、しかも音像の外側の輪郭を過剰に意識させずに内側の豊富な情報量を受け取ることが出来る、良いヘッドホンだと思います。

リケーブルについては純正シルバーコートもありますが、その前に試してみたいことがあるので先方と打ち合わせ中です。

やりすぎないこと、見えすぎないこと

1.ゲスト出演しました

先月、Focal Utopiaを2週間ほどbergamotさんからお借りしていました。

その感想をブログに掲載させて頂いております。ぜひご覧ください。

www.bergamotflavor.com

以前の、HE1000とオヤイデ銀16芯ケーブルの件も含めまして、私からも何かしらネタになるものを提供したいなと思ったので、HD800に平常使用している102SSCの16芯ケーブルをレンタルしてみることに。

Utopiaを返送する際に同梱して発送しました。

 

同じHD800の、導体容量も同じ16芯における銀線と102SSCの比較という視点でreviewして頂きました。

 

 

 

先方の環境はHPAにOJISpecialをお使いなので、低域の弾力性に関しては当方の音より再現性が高いと思われます。それでも、「音の放散」「密度を高めつつも音場を狭めない」などの項目は、こちらでも確かに感じます。

 

2.ヘッドホンの更新を、考えてはいたのだけど

そもそも冒頭に戻ってUtopiaをお借りした理由は、4年間使い続けたHD800からそろそろ更新したいなと思い立ったからでありますが。

結局2週間使ってみて、このヘッドホンを実際に購入する決断をするには、なかなか難しい存在だと感じました。

HPAに求められる駆動力よりも、DACや上流の電源に非常にシビアなヘッドホンです。

Utopiaで初めて「マルチビットDACのデメリット」に気づくことができました。

高域で目が粗くなっていくのが手に取るようにわかってしまって。。。

また、ケーブルで音色を寄せていくことの弊害についても。

HD800も環境の反映力はそれなりにあるんですけど、Utopiaまではシビアに描かないので、気づかずにごまかせていた部分がかなりあったということですね。

 

その後、HiFiMANのANANDAが、HE1000シリーズのような極薄平面ドライバーを10万円を切る価格で載せてきたと、各所で評判なので私も試聴してみたんですが、「HD800と2台併用するにしても、あまりピンとこない音だなぁ」と思い、これもパスしました。

 

また海外フォーラムでは、HE1000 V2のドライバーをEditon X V2の筐体に入れたARYAというモデルが話題になっています。日本でもそう遠くないうちに発売されるでしょう。

www.innerfidelity.com

国内実売18万ぐらいだと見ています。

音色だけで評価すればUtopiaよりHE1000の方が好きだったので、期待してはいるのですが。

 

3.HD800本来の音に立ち戻る

さて、102SSCケーブルを先方に貸し出しているので、約1年ぶりにHD800を標準ケーブルに戻して聴いています。

若干の低域方向の物足りなさ、銀コート線による子音の僅かな付帯音など、気になる点もあることにはありますが、音楽的なまとまりや繋がりの良さは標準ケーブルの方が完成されていると思います。

そしてこれが、やはりSennheiserの目指す音楽性であり、HD650の延長線上にHD800が存在するのだと理解できたのです。

 

Sennheiserの音楽性とは、「明るさの中にも陰りを含む」絶妙なバランスにあると思っています。それでいて、意識すれば見通せるけれど、これ見よがしに全てを掲示しない、ある意味での奥ゆかしさと言いますか。

リケーブルすると、まずこの「見える部分が拡大する」わけですが、すると今度は音楽としてなぜか単調に聴こえてしまうことがありました。

 

4.リケーブル変遷

かつてのHD650は、標準ケーブルのままではもやもやしてつまらない音と評する方も多く、実際に過去に私もリケーブルしてみたことがありました。

まだDACとHPAが一体になった複合機でお手軽に楽しんでいた時期のことです。

NuForce UDH-100、ONIX DAC-25Aという傾向の違う機種を併用していました。

Zu mobius MK2とUDH-100の組み合わせは、もはや今思うと本来のHD650とはどんな音かわからないくらい、ドライでかさついた音ではなかったかと。。。

パシフィックオーディオ [製品案内-zu-ヘッドフォンケーブル]

 

さて、HD800リケーブル第一弾として選んだFURUTECH iHP-35Hxは、この代表みたいな存在でして、数カ月で使わなくなってしまいました。

クッキリハッキリした音にはなるんですけど、ロジウムメッキのせいか余計子音は目立つ結果に。。。

その後、ヤフオク経由でオーダーしたオーグラインのケーブルを長く使うことになります。

導体が4芯と控えめなので空間の奥行きは浅くなりますが、中高域の艶と繊細さが非常に気に入っておりました。このケーブルの作成者様はHD800の特徴をよく理解されていると思います。

 

そして現在の3本目が、過去記事で紹介しました102SSC16芯編み込みケーブルとなるわけです。

rays.hatenablog.com

このケーブルでは基礎性能の向上を狙いつつも、なるべく音の角を立てないように、導体とプラグの選定を考えてオーダーしています。

銀線や銀メッキ線を避けて、銅の中でも表現が柔らかいと思われる102SSCを。

ロジウムメッキのフォーンプラグでは輪郭が立ちすぎて音の繋がりの自然さを失ってしまうので、Viablueの金メッキ。

私からは特に指定はしていないのですが、ケーブルの編み込みピッチが緩めだったことも、音を締めすぎない方向に作用してくれているように思います。

 

5.解像度も分離も求めなくなって

 最近購入したORB HC-150ACW 電源ケーブルが非常に好感触だったので、それにアタッチメントする電源コンディショナーを継ぎ足してみます。

このスチールボックスの中にはフィルター回路は入っておらず、金メッキされたバスバーが格納されているようです。

人によっては解像度が落ちた、鮮度が下がったと聴こえるかもしれません。機材の直前に接点を増やすわけですからその方向に作用するのは当然であって。

それでも、ORBのアクセサリーに共通する色彩感の豊かさ、声の色艶、音のスムーズな繋がりは、まさに私が求めていた方向性と一致します。

 

このところ、音の輪郭を立てて分離を向上させていっても音楽的な満足度が全くプラスに働かないので、むしろこれらの要素をどんどん落とす方向にさえ舵取りしている有様。

ヘッドホンアンプも、DCHP-100から真空管のアンプにいつしか置き換わっているかも?

 

もうひとつの基準

1. 90年代のDACをお試し購入

前回の更新で、80年代や90年代の古いDACに興味があると書きましたが、

rays.hatenablog.com

TDA1547(通称DAC7)が搭載された90年代の国産品 TEAC D-T1を買ってみました。

TEAC D-T1の仕様 ティアック

 

10年ぐらい前の某掲示板では、DAC7搭載機が某声優の声を甘く魅惑的に再現してくれる、なんて書き込みが目立っていました。

その中にはD-T1も、何度も話題に出ています。

釘宮ボイスとDAC7

あれ?hayateさんがいる。。。

 

安く手に入れたので、期待半分、不安半分で音出しです。

 

2.やはり安易だった(笑

「あれ?暗い・・・」

元々高音が強調された音源でも、角が丸くて聴きやすい音にはしてくれるんですが、私が期待していたような音の色は再現してくれません。

このような傾向であれば、落ち着いている中での緻密さや表現力、色彩感の良さというのが欲しいのです。しかしこれは、ただまったりしていて大雑把で、そして暗い音色です。

空間も全然広がらないし、立派な面構えの割には低音もまるで出ません。

 

古いDAC7なら、TDA1541なら音がいい、という考え方は、結局ベクトルを反対にして

新しいES9038なら、AK4497であれば音がいいと言ってしまうのと同じなんですよね。

最終的な出音の良さというのは、やはりエンジニアの思想と音楽性であり、それらをアナログ出力段の回路に落とし込むことによって生まれるものだということ。

もう6年ぐらい前になりますが、TEACはUD-501・HA-501のセットを聴いて、「どっしりしてるけど何か野暮ったいというか、暗いな・・・」と感じました。

元々そういう音作りのメーカーだということをすっかり失念しておりました。

 

3.大切なのは、やっぱり中域

予想を下回る音だったので正直落胆はしたのですが、音楽的には一応成立しているというか、これはこれで「聴ける」音なんですよね。

それはなぜかと考えたときに、上下のレンジを狭めてでも中域の濃さが確保されているからなのです。

そして一音一音の繋がりにメリハリが付きすぎないので、音の流れが自然に感じます。半面スピード感は遅いと言わざるを得ませんが。

 

半面この5~6年で市場に出回っている(いた)比較的低価格帯のDAC(CDP一体型を含む)を思い出してみて、この中で「中音が充実していたもの」とは?

過去の記憶を辿っても、特に国産メーカーで印象に残っているものはほとんどありません。

近年特にハイレゾ対応をクリアするために高音の再生限界を伸ばすことにばかり注力して、現在は各部品の供給コストが増したことで物量投入ができなくなり、結果低音が出なくなった状態を「スッキリ」と言い換えたような気さえしてしまいます。

今、D-T1のような5mm厚のアルミケースで、フルサイズの筐体の製品が8万円で出せますか?

音は正直価格相応だとは思いましたけど。ことガワに限っての話です。

 

4. 軌道修正用の「もうひとつの基準」として

PAGODA DACに戻してみると、一気に空間は広がって明るさが蘇ります。

でも、なんだかちょっと高音キツいような?

1年半前にこのDACを買った当初は、もう少し落ち着いた音だった記憶もあります。

普段から「中域の濃さが大事」って言っておきながら、気がつくとまたHiFiの道を進もうとしてしまう、こんなことを私はしょっちゅう繰り返しているのです。

 

しかしそれも今回でループを断ち切れそうです。

真逆の音を一度インプットすることができたのですから。DACだけで全体の音がここまで変わるんですね。。。

ずっとひとつのDACでやってきた時期が長かったので。ケーブルとかはちょこちょこ替えたりしてるんですけど、このレベルの変化は出せないです。

 

TEAC D-T1は純粋な音に対する満足度は残念と言わざるを得ませんが、世間的に良しとされているHiFiな音とは真逆の基準を別にひとつ持っておくことで、私が今後また道に迷い始めたときに立ち戻る「軌道修正用」として、手放さず持っておくつもりです。

あまり稼働機会は多くないと思いますが(笑

 

5.少しだけ「逆側に」寄せていく

JPLAYStreamerを介したネットワークPCAudioということで、トランスポートのPCのプロセスカットを始めとして、これまで色々な対策を施してきたのですが、あえてこれらを緩めることで「音にゆとりを持たせる」方向に軌道修正です。

 

まずFidelizerの適用をやめました。

www.fidelizer-audio.com

OSの設定やプロセス優先度をPCAudio向けに最適化するソフト。

確かに解像度やオーディオ的指標の部分では向上が見られますが、音の温度感が下がってドライな傾向になってしまう面がどうしてもありました。

導入当初から薄々気づいてはいたんですが、実際に使用を中止しようと決断できたのは、やはりTEAC D-T1の音を聴けたから。

 

さらにJPLAYの設定を変更していきます。

Engine:ULTRAStream→Xtream

DAC Link:170Hz→5Hz

PC Buffer:0.1sec→1sec

XtreamSizeは以前、最大値5000まで上げていましたが、動作不安定さ回避のため500まで下げました。

根本的な音の傾向はEngineで決まります。Xtreamの方が中低域の力感が出ます。

ULTRAStreamは中高音の繊細さでは有利ですが、反面神経質な音になりがち。

DAC Linkも下げた方が音が太くゆったりとした傾向に変化します。

 

さらに、タブレットでのコントロールをやめてPCからkinskyで操作する使い方に戻しました。

結局ヘッドホンオーディオなのでPCとモニターの前にいるわけですから、こっちの方が楽なんです。

PC上で再生ソフトを展開しないタブレットコントロールは余計な処理を避けて音質を向上させる意味では有効な手段ではありますが、結局私にはBubbleUPNPのUIがそれほど使い勝手が良いとは思えなかったので、便利なPC操作に再度戻ってきたわけです。

タブレットコントロールで音が良くなったか、今思えばほとんど実感はなかったです。

 

後はDDCのコントロールパネル開いてレイテンシをLowからStandardへ緩めたり、ストレージをSSDから3.5インチ外付けHDD(lacie製)に変更する等、他にもありますが些末なことなので省略します(

 

6. 目的と手段の倒錯

まだ落としどころは試行錯誤の段階ではありますが、以前の音よりはだいぶゆとりが出てきました。

(狭い)世間ではJPLAYでDACLink700Hz再生を達成するために躍起になっているようですが、(OSの設定を極限まで詰めないと音が出ないようです)

何か根本的なところで目的と手段がすり替わってはいないか疑問に思うことがあります。

 いつ音が途切れるかわからない、そもそも頭から再生されないこともしばしば、そんな中で音楽聴くのって嫌じゃないですか?(笑

かく言う私もその手の道に片足突っ込んで、嫌になって出てきたわけですね。

結局、HiFiな音にはなっても音楽性の向上という面では、さほど恩恵を授かれなかったように思います。しかも「いつ動作不安定になるかわからない」という、見えないストレスに苛まれていく。。。

PCAudio、ネットワークオーディオはそもそものスタートが、部屋の中で聴きたいCDを探さなくてよかったり、PCの前まで移動しなくてもソファーに座ったままタブレットで選曲できる、そういう利便性から始まったわけでしょう。

 

趣味というのはある意味では細かい変化に気づくこと、試行錯誤してみることは必要なんですけど、そこに悪い意味でのストレスが付随するようでは、それでは何の為の趣味なのか・・・

ハイレゾ対応によって失われたもの

まずは近況報告。

Philewebに別館を開設しました。

community.phileweb.com

こちらは機器やアクセサリーその他について、個別に分析的に淡々と更新する使い方となります。

 

community.phileweb.com

PAGODA DACについても、オーディオ的な視点から再度まとめておきました。

 

community.phileweb.com

こちらの記事では記述していない内容ですが、BubbleUPNPの有料版を購入すると追加される機能のひとつとして、こんなものがあります。

 

 

 コントロールポイントとして使用しているタブレットで、「ホームポータブルオーディオ」のような使い方もできるということです。

普段の据え置きヘッドホンシステムで聴いている場所は1Fにあるのですが、家族がテレビを見ている時間などは使えませんので、

2Fの寝室で漫画を読みながら、音質的には多少妥協することになりますがタブレット側のDACを経てイヤホンジャックから聴く環境をイメージしています。

(2Fに据え置きシステムを設置していないのは様々な事情があります)

タブレットHuawei MediaPad M3 lite 10を先月購入しました。

一応この機種はDACにAK4376が搭載されていて、いわゆる普通のスマートフォンよりは音質は良いのではと思います。しかし音量調節は一般的なスマホ並に目が粗いのがオーディオ的には問題となります。

(上記twitterの引用のように、タブレット側の音量は固定してアナログポータブルアンプで調節する対処法はあります)

このような経緯から、私は普段イヤホンを使う機会がなく、あまり興味がなかったのですが、久しぶりに何か試聴してみようという気になったのです。

タブレットのストレージに少し音源を入れて持ち出して、店頭でイヤホンジャックに挿して試聴です。

 

ヘッドホンではfinal D8000がなかなか良かったので、このメーカーのイヤホンを聴いてみることにしました。

気軽に手を出せる3万円あたりのミドルクラスとして、

・E5000

・Heaven VI

この2機種が対照的だったので取り上げてみます。

E5000は今年発売されたハイレゾ対応最新機種、対してHeaven VIはこの企画基準が設定される前の時代の(正確な年次はわかりませんが)2011年頃に登場した製品となります。

 

さて、結局イヤホンは今回の試聴でも実際の購入には至らなかった

(イヤーピースを耳に入れること自体に生理的な不快感があるので・・・ヘッドホンを頭に装着するのは平気なのにw)

のですが、前述の2機種のどちらを選ぶかと言えば「Heaven VI」。

声の質感がこちらの方が自然で表情も豊か、音の色は若干黄色っぽくて、とても良い塩梅でした。

E5000は確かにクリアで晴れやか、落ち着きのある音なのですが、それと同時に「何かが一緒に削ぎ落とされてしまった」感じがします。。。

心が揺り動かされる振れ幅が、Heaven VIより小さいのです。

 

入念な市場調査とユーザーの嗜好分析を反映して開発されたのがE5000であり、8割方の人はこちらの音を良しとされるのでしょう。

あくまでここから先は個人の好みに終始する問題であって、E5000の音が悪いというわけでは全くないのですが(トータルバランスはとても良くできていると思います)

私にとって「味のある音」が少なくなっているような気がします。。。

これは私が2年前にDAC更新を思い至ってESSやAKMが搭載された新製品を散々聴いて回って、結局は10年前に製造完了となったPCM1704という古いマルチビットDACを選んだ流れと似ています。

 

そして今はPCM1704よりさらに時代を遡り、TDA1541が気になっているのでした。

これはCDプレイヤーが世に登場した1980年代のDACです。

TDA1541は16bit 44.1kHzと48kHzしか入力を受け付けません。

(PCM1704は24bit DACです)

それでも「音楽にとって重要な情報」が削ぎ落とされずに残っているのは、こっちの方なんじゃないかと、現代機よりはずっと希望が持てるのです。

(聴いてみない限りはわかりませんが)

流石に、これの状態の良いものを見つけるのは難しいかな、とは思っていますが。