デジタルフィルターの違和感について ~真の情報量とは~

2年前にPAGODA DACを導入して以来、ずっと書こうと思っていた記事ですがなかなかまとまらず後回しにしていた内容です。1年ぐらい寝かせていた記事だと

rays.hatenablog.com

がありますが、今回はそれよりも潜伏期間は長いです。

私はオーディオを趣味としている人の中では機械的な興味は薄い方ですし、自作はおろかろくに回路を読むこともできません。書けるのは自分の感覚と体験のみです。

それでも、誰かには伝わると思って今までブログを書き続けてきましたし、この半年ぐらいでだいぶ手応えを掴めるようになりました。

先に次回予告をしてしまうと、閑話休題的ですがこのブログの立ち位置というか、ある意味での「読み方」であったり、そういうところを確認する回にしようと考えています。

 

試聴に出掛けても・・・1曲丸ごと聴くことすらできません

DMP-Z1を銀座ソニーストアで試聴した際も30秒で停止しました。結局のところヘッドホンMDR-Z1Rの個性なのか、DMP-Z1が原因なのか判断が付かないのですが、過去にも様々な機材を試聴して「すぐに中止した」例は相当数あります。

rays.hatenablog.com

この記事の冒頭のマス工房は、HPAの性能は凄まじいものがありますが音楽的にはかなり酷い音が出ていました。「頑張って」2曲ほど聴いてきましたけど。それは決してマス工房の機材に原因があるのではなくて、DENONのCDPがボトルネックとなっています。この事は社長さんにもお伝えしてあります。

 

音が良い悪い、それ以前に・・・

違和感なく聴けるDACが本当に少ないです。爆弾発言にも程がありますが今の私はこんな状態です。性能が高いほど「至福の音」か「地獄」か両極端です。逆に高解像度・分離の良さを最初から目指していない製品は、高みには登れませんが安心して聴ける音で、そして音源の音楽性がよく伝わってきます。

 

現代の国産DACでお勧めできるのはsforzatoぐらいです。

www.fujiya-avic.jp

この記事は2年前なので今とは少し構成が違いますが、ヘッドホン祭ではページ中段のタワーが毎回鎮座しております。音は確かに良いのですが、展示機材トータルでどれだけの金額なのか・・・ヘッドホンオーディオの概念を超越してハイエンドスピーカーと同じ土俵にあります。

 

ヘッドホン祭で「聴けた音」を振り返って整理してみると、まずブースが自前でクリーン電源を用意している(PS AUDIO等)場合は間違いないです。フジヤの試聴スペースもPP10から供給されていて、はっきり言ってダイナ1Fよりずっと良いです。

次点でDACの音作りであり、HPAの性能はさほど問題にはならないです。ただluxmanの場合は上流の質感を全部塗り替えてしまうので別の問題があります。

 

デジタルフィルターの違和感について

今回の本題です。おそらく私が現代DACのほとんどが受け付けない主な要因のひとつであると考えてます。

NOSマルチビットDACの音を一度覚えてしまうと、アップサンプリング・FIRフィルターによる本来の音楽信号には存在しないプリリンギング・ポストエコーの付加された音が「電気的な歪」として感じられてしまうのです。輪郭が曖昧で、中域はサラサラしてますが密度が薄くて感情の起伏に乏しく、高域は耳を刺す局所的にエネルギーの強いポイントがあります。DENONはフラッグシップのプレイヤーでもこんな音です。ESOTERICも正直厳しい・・・

 

DFは、そもそもの出発点がコスト削減であって

デジタルフィルタ(DF)のアルゴリズムをあれこれ考えるぐらいなら、アナログフィルタ(AF)で組むという発想にはならないのでしょうか。

AFは位相特性を維持するのが難しい側面はありますが、良く出来たAFはそれ自体が高周波ノイズを抑え込む効果があるそうです。現代DACやデジタルフィルターは高性能化によってどんどん動作周波数が高くなっていますので、トータルの設計で高周波ノイズをしっかり抑え込む必要があります。それは電源対策であり、アナログ段の構成も関わってきます。

昔の製品の方がずっしり重くて筐体内部もギッチリ詰まっていて、その製品の音が良いか悪いかはともかくとして、今の時代とはアナログ段への投資が段違いです。単純にデジタルで出来ることが少なかっただけかもしれませんけど。

 

真の情報量とは?

身も蓋もない回答を先に書くと、そんな正解はどこにもないのですよ。

アップサンプリングによって補完データを挿入することが偽であれば、16bit / 44.1kHzの信号をそのまま取り扱うのだって、アナログの連続的な信号と比較すれば圧倒的に情報量が不足していますから偽とも言えます。

どちらが正しいのではなくて、聴いてみて自然に感じられる方を選択すればいいのであって。NOSマルチビットでも私が知らないだけで違和感のある音を出すDACがあるかもしれないということです。

DAC7でもTEAC D-T1で一度外れを引いてますし。アレは音楽的な違和感はないですがとにかく「精彩を欠く」音で。。。

 

デルタシグマとマルチビットって「子音の刺さり方」が違いませんか?

実はPAGODA DACって完全に刺さらないわけではないんですよ。

詳しい方に筐体内部の画像を見た印象を伺ったのですが、電源周りの構成から考えて、高周波ノイズはかなり残っているそうです。

「僅かに刺さりながらも普通に聴ける」のがPAGODA DACで、それよりも測定結果はおそらく断然上なはずの現代DACが「子音が痛くて聴けない」というのは、普通に考えておかしいはずですよ。

音は肌理細かいのに、高域の特定のポイントに決定的な違和感があって全体の「聴感」S/Nの足を引っ張る形になっていて・・・。中域の密度感はDAC以外で調整可能だとしても、この「痛い子音」だけはどうにもならないんです。本当にもったいない・・・。

 

DACにも「駆動力」という要素がある

ause-audio.com

これまで私は駆動力というのはアンプ側で引き出すものだと考えていたのですが、DACにもこの概念が適用できるというのは目から鱗で、そしてPAGODA DACはこの「駆動力」に関しては私が以前使っていたNorth Star Design Intensoと比較するとかなりの差があることに気づきました。

PAGODA DACは音を鷲掴みにして、前方に投げ出してくる力が強いのです。

私は音楽から生きるエネルギーをもらっているのに、パワーの源が小さかったらそれは元気が出ないですよ・・・

 

逢瀬さんのハイエンドDACは、これは私の想像ですがマルチビットの駆動力と現代DACの繊細さを両立させたものになるのではないでしょうか。

完成されたときに私の手に届く価格帯にはならないかもしれませんが、その時はこのアーキテクチャが採用された業務用DACという手もありますし、とにかく今後とも期待しております。。。

真の「ハイレゾ」とは ~40kHzまで伸びてなくてもいいじゃない~

現在の「ハイレゾ」の定義

日本オーディオ協会の策定した”ハイレゾの定義”には

スピーカー・ヘッドホン高域再生性能:40kHz以上が再生可能であること。

 とあります。これはアンプ類も同じで、”40kHz以上”というのが一律に決められているようで。

確かに24bit / 96KHzのハイレゾ音源の場合、ナイキスト周波数は半分の48kHzですから、40kHz以上の帯域再生能力を有することは高音質再生の「ひとつの要素」にはなりうるかもしれません。

しかし「40kHz以上に伸びていたら全部ハイレゾ」とでも言わんばかりな現状には呆れてしまいます。

3000円のイヤホンでも、40kHzを超えてるからとハイレゾマークを堂々と貼り付けている始末です。安いからダメって頭ごなしに言いたくはないですが、何ていうかもう少し格というものを持たせませんか?

 

中・低価格帯こそ中域へのフォーカスを

「ちょっと音に興味を持った」一般層向けにハイレゾ商法がウケてしまったので、一部の良心的で真面目なメーカーを除いて、高域・可聴帯域外の超高域にしか目が向いていません。さらには欲張って低域ブーストなんて始めると、中域の緻密な描写は限られたコストの中では無理でしょう。

もはや中域が完全に埋もれてしまっているものもあります。。。

 

中域の緻密な描写と、低域から超高域までのレンジ確保の両立は本来非常に難しいものなのです。ハイエンドオーディオならともかく、普及価格帯であればどちらかを捨てなければなりません。このとき、40kHzという無闇なハードルを超えるという方向に一様に邁進してしまって、肝心の中域がおろそかになっている。

製品のバリエーションを狭めているという意味でも、この規格は有害だとすら思っているのですが。 

 

 既に「数字だけ」ハイレゾ対応させたイヤホン・ヘッドホンが市場に溢れ返ってしまった現在において、それが「ちょっと音に興味を持ったぐらいの一般層」に、低音も高音もたいして出ないような製品が売れることはおそらくないでしょう。中域の緻密な描写を感じ取れるにはある程度の耳の訓練が必要だからです。販売側の、阿漕な業界の姿勢には文句を言いたくもなりますが、買う側の多数の人間に指指して笑うような個人サイトの書き方は正直性格が悪いと思いますよ。

世の中ひとつのことを丹念に調べる人なんて、我々の思っているよりずっと少ないです。それをわざわざあげつらっても仕方がないでしょう。

「売れているんだし、良いものなのだろう」と思って買う大多数の人々を、正しい方向に導いていくことが業界の使命であって。市場調査で「今ウケている音はこうだから」といって追従するのではなくて、逆にメーカー側がリードしてあげないといけないと思います。それが自社の製品に誇りを持つということにも繋がるのではありませんか?

 

Meze 99 classicsを聴いて

これがeイヤホンでアラウンド3万円の価格帯のヘッドホンで人気1位の製品だと知って安心しました。

情報量も並ですし分離も団子気味、音像定位も明確には出てないですが、とにかく中域の丁寧な表現、豊かな色彩感は特筆すべきものがあります。

低域もそこそこ出てますが、音楽的に美味しい帯域をリッチに膨らみを持たせてローエンドは無理に欲張らずに落としています。高音も同様で艶を引き出しつつもキツい音は出さないという明確な設計の意図を感じます。

Mezeはルーマニアのメーカーですが、今の国内メーカーが主流の音とは全く異なる独自路線で、それがきちんと受け入られているという事実を、日本のメーカーは認識するべきだと思います。

Finalは国内メーカーの中では中域の描写は大事にしているのが聴いて伝わってきますし、評判も近年だいぶ良くなってます。これにどんどん他のメーカーも続いていって、良い流れの循環が出来ることを願います。それが最終的にはもっと下の1万円付近に、今後様々なメーカーから良い製品が充実するということに繋がると思うのです。

SONY MDR-Z1R

前回の記事で、DMP-Z1を銀座ソニーストアで年明けにもう一度聴いてみると書きました。とりあえず予告通り行ってきましたので追記です。

ソニーストアは一昨年に建て替えがあって内装はとても綺麗でした。いかにも銀座らしいというか。フロアの天井はごちゃごちゃしてたのが残念ですが。

 

現地にて許可を取ってmircoSDに入れた手持ちの音源で試聴したところ、今度は一転してDMP-Z1の評価ができなくなりました。というのも8~10kHzあたりが常にヒリヒリした感じでvocalは刺さるしそれ以外の音もどこか違和感があります。おそらくヘッドホンのMDR-Z1R自体がそういう個性なのだと思います。前回試聴した際はデモで用意された音源がたまたまそのような部分が目立たないものだったのかもしれません。

 

DMP-Z1は4.4mmバランスで聴かないとあまり意味がないと思っています。ちなみにバランス接続ではMDR-Z1Rだとローゲインの11時で音量は足りました。他のヘッドホンで聴くにもこの仕様のケーブルはすぐには用意できないし、3.5mmアンバランスでは気が進みません。なのでこれ以上DMP-Z1については考えることをやめました。元々どうしても買いたいというものでもないので、eイヤでは常設展示してありますが試聴する気はもうあまりないです。なので今回はタイトルにある通りヘッドホンの MDR-Z1Rについてです。分量的にはメモ書き程度で短めです。

 

SONY MDR-Z1R

密閉型でありながら閉塞感がなくて空間は広めで、抜けの良さは水準レベルにありますが開放型と比較で厳しい目で見ると僅かに劣ります。どうしても1枚隔てた感じはあります。

空間表現はHD800のような中心に力感があって周囲に広がっていくタイプとは違います。中央の定位はHD800の方が明瞭です。MDR-Z1Rはどの位置でも完全にではないですが厚みが均一で、ダイナミック型ではありますが平面駆動方式との中間的な音とも言えます。

70mmドライバー採用で大型ですが低域は若干ロールオフが早めで、中高域寄りに感じます。普段Final D8000を聴いているから基準が麻痺している可能性はありますが(

 

「癖のない音」というレビューが目立ちますが、私には結構癖の強い音だと思いました。低域はあまり締め上げず柔らかな質感、高域はシャープで温度感は低めという対比が特徴です。サ行の刺さりはHD800にもありますがこちらは低域は硬め、全体的な温度感は高めで声の再現には独特の魅力があります。MDR-Z1Rはどこか人の声もボーカロイド的な質感で表現されてしまう印象です。残念ながらこのヘッドホンにあまり音楽性の高さというものは感じ取れません。

120kHzまでの超高域再生、って本当に必要なのかなぁ。。。

 

近年のスーパーハイエンドヘッドホン、Focal UtopiaやFinal D8000と直接比較すると流石に分が悪いですが、現在の実売16万円という価格は安い方ではないかと感じます。

ガレージメーカーがこのレベルの音を実現しようと思うと25万円は超えてくると思います。そこはやはり大企業SONYの強みといったところでしょうか。

だったらDMP-Z1とかもう少し安くならないのかな

 

P.S.

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「曲面レンズみたいに端っこが歪んでる感じ」

誰かこの感覚わかりませんか・・・

vocalが刺さるっていうより空間の右上、左上が常に位相ズレしてるっていうか。。。

重厚長大ハイエンドオーディオは衰退しました? SONY DMP-Z1試聴記

妙に古いラノベのタイトルっぽいので釣るのはやめるんだ

 前回記事の続きですが、eイヤではイヤホンを買う以外にもうひとつ目的がありました。

12/9はSONY DMP-Z1の店頭試聴会がありました。私もこれをヘッドホン MDR-Z1Rで聴いてきましたので、これについて書くのが今回のメインです。

av.watch.impress.co.jp

95万円でTPA6120A2?

この日試聴する前に、夏にこの機器の存在は情報を得ていたのですが、8月に香港で販売をスタートさせていて、国内展開は12月からという流れでした。

近年は国内メーカーが高級機をまず海外展開させてから国内へ持ち込むパターンがちらほらありますね。オーディオテクニカも欧州向けに展開していてまだ日本には入れていないアンプがあったような気がします。

 

DMP-Z1を最初に記事で見たときは、はっきり言いますが音については全然期待はしてなかったです。アナログアンプ部にTPA6120A2と見たときは正直落胆しました。

数万円の中華アンプにも使われているようなもので、他にも選択肢はありそうですがよりによってこれですか。。。

元々SONYはS-MASTER HXというデジタルアンプの技術が蓄積されているはずです。これを今回のような高級機で、あえてアナログアンプで構成するというのなら、せめてディスクリートで組んでほしいなと思ったものです。

 

あれ?意外と周りの評判が・・・?

良いんです。ゲスト出演してきました雪みかんさんとか(

おふざけはこのぐらいにしておいて、こちらです(

 🐺さんとは嗜好のポイントはもちろん人それぞれですから私とも異なるわけです。でも私はこのお方の耳の良さと「本当に良いものを聴き分ける」判断力に関しては一目置いていることをここで告白しましょう。

特に「音の濁り」には私より敏感です。

 

聴いてみた

本当は15・16日のポタフェスで開発担当者からお話伺いたかったのですが、その週は土日両日予定があったので、9日のeイヤ店頭試聴会で聴いておくことに。

見た目はDAPの延長線上みたいな印象ですけど、ちゃんと据置のヘッドホンアンプレベルの音が出てます。流石にOJISpecialとか単体100万円クラスと比べるとまだまだ及びませんが、想像していたレベルよりはだいぶ良かったです。

バッテリー駆動というと、クリーンではあるけれど力感が弱いというのがありがちな例ですが、DMP-Z1はしっかりグリップして駆動できています。個人的にはChord DAVEのHPA部よりはDMP-Z1の方が良いと思いました。

ちなみに、ローゲインかハイゲインなのか、試聴時に確認を忘れていました。MDR-Z1R ヘッドホンとの4.4mmバランス接続なのでおそらくハイゲインではないかと思いますが。

 

美観と機能性と音質と

私は未だに「大きくて重い」機器への憧れが捨てられません。役割ごとに機器を分離させ、しかもそのひとつひとつが無駄に大きく、接続するケーブルの数も必然的に多くなる(しかもケーブルそれ自体が太く重いという始末)。。。

振り返ってみると、トータルでは結構な金額をオーディオに費やしてきた自覚はあります。

 今はこのLacieのHDDは小さな外付けSSDに変更しましたが、一般的な美観の悪さという点ではさほど変わりがありません(笑

特に自宅の環境ですとJPLAYのネットワークオーディオに対応させるためにLANとUSBのデジタルケーブルの本数が多くて。。。

この上段にDACとHPAがあって、まぁ見た目は似たようなものです。

 

SONY DMP-Z1は、この1台をデスクサイドに置くだけで、(少々覗き込む必要がありますが)内蔵の液晶モニターで選曲・プレイリスト作成もできるので、後はヘッドホンだけでシステムが完結してしまいます。

見た目のスマートさは、明らかにこちらの方が現代的です。

 

過去の「オールインワン」へのマイナスイメージ

かつてはこうした複合機というのは、多機能性を重視した結果音質は片手落ちになるというのが通例でした。

古くはLuxman DA-200から始まり、Burson Audio Conductor V2が登場したときには、結構この手の製品も進化の軌跡が見えるなとは思いましたが、それでも私にとってはまだ満足できる音が出ているとは感じられません。

電源を各部で共有していることが音の力感や駆動力のなさ、分離が悪く混濁を感じる要因となっていて、カタログスペックでは良く見せているけど実力が伴っていない印象が目立ちました。

なので、私は「音質にこだわるなら、やっぱりセパレート構成を」と思ってしまうわけです。

 

重厚長大ハイエンドオーディオは衰退しました?

キャッチーな見出しを付けてみたかっただけで本当に衰退してるとは思ってませんのでご安心ください(

私がここで述べたいのは、DMP-Z1のような「統合型システム」で、それが本当に音が良い機器であれば、それに越したことはないですよね?ということ。

趣味的な意味では、ケーブルをあれこれ試してみる、オーディオラックはあれが良い、インシュレーターは・・・というようなマニア的な楽しみの要素は消えてしまうわけですが、DMP-Z1はそうした層をターゲットにはしていないのでしょう。

ウォークマン」に親しんできた人にとっては、オーディオラックに2台、3台と機器を格納する仰々しい見た目よりも、DMP-Z1をこれ1台とヘッドホンで完結してしまう方が親しみやすい、ポータブルオーディオの延長線としてイメージしやすいのではないでしょうか。

 

低能率・高インピーダンス設計ヘッドホンの弱点

私がオーディオに興味を持ち始めた頃、2012年あたりのことですが、当時は低能率・高インピーダンス設計のヘッドホンを、大出力ヘッドホンアンプで動作させることが良いと言われてきました。ある種のステータス的なノリもありましたね。

Audeze LCD-3も初期型はすごく鳴らしにくいことで有名だったんです。かなり高電圧を掛けないと低音がすっぽ抜けます。

学生卒業したばかりで、まだちょっと手が届かなかったですが、これらのヘッドホンをしっかり駆動できるフルサイズの大きく重いアンプには憧れたものです。

しかし、それから数年に渡って色々試聴したり実際に製品を購入して経験を積んでいくと、これらの「鳴らしにくいヘッドホンを高電圧を掛けてドライブする」システムの弱点が見えてきました。

 

「軽やかに歌わない」んですね。遅くて重い低音、暗くて伸びない高音の組み合わせが典型的でした。そして今の私が最も重視する要素「音の毛羽立ち、産毛のような微細な情報」が消えてしまっているんです。

つまり、ドライバーが低能率であることによって微小信号をロスしていて余韻が引き出せていないのですが、結果的に音の表面がツルツルしていて耳障りな嫌な音を出さないので、これを良しとする人が多いのも理解はできます。

「綺麗ではあるけれど、凄み、エグみのような要素は表現されていましたか?」と問うてみたい気持ちはありますが。

 

そしてこのような音の傾向は、過去記事にて散々書いてきましたが現在のDAC・デジタルプレイヤーにおいても同様です。今回のDMP-Z1も例に漏れず。

音は良いけど、かなり意図的に表面を研磨して滑らかにしているのがすぐに分かってしまったので、私の求める方向の音ではないです。

私にはその「削り取った薄皮の間」に重要な音楽的情報が詰まっているのですが、これを理解してくれる設計者は、今はなかなかいないのでしょうね。

 

「鳴らしやすい」のは良いこと

近年、ハイエンドヘッドホン界隈においても、高能率・低インピーダンスな設計の新製品の割合が増えている印象です。

Focal Utopia , Final D8000 , Meze Empyrean etc...

旧世代ハイエンド機というと、beyer T1(600Ω) , Sennheiser HD800(300Ω)

この両機はインピーダンスは高いですが能率は102dbなので、音量を確保するだけならHD800であればDAPでも何とか可能です。しかしそこから出てくる音は弱々しくて全く物足りないものです。電圧が足りていないからですね。

T1に至ってはアンプ次第で相当出音が変わります。これについては🐺ちゃんのエントリの方が詳しいのでご覧くださいませ。

 

www.bergamotflavor.com

 SONY DMP-Z1は4.4mmバランス入力は備えていますが、6.3mmシングルエンドはありません。(シングルは3.5mmステレオミニ)

バランス側も、据置アンプで主流の4PinXLRや3Pin×2は備えていないので、ここから察するにローゲインではイヤホン、ハイゲインでは普通の感度のダイナミック型ヘッドホンなら鳴らせますよ、という感じでしょうか。

 

それに関して不満があるという方の意見も、十分わかります。しかし今後登場してくるであろうヘッドホンは、ハイエンドであろうと以前のような低能率・高インピーダンス設計ではないものが主流になると私は思っています。なので旧来の低能率設計なヘッドホンに合わせるほどの高出力にするという選択はしなかったのではないかと。

DMP-Z1を購入されたユーザーは、外で聴いていたイヤホンをDMP-Z1でも聴いてみたいと思う人は多いでしょう。

だとすれば、DMP-Z1のローゲインモードは結構控え目な出力になっているのではないでしょうか。SONYですから大企業なりの安全策を講じていると思うんですよね。

これについては年明けに銀座のソニーストアにて確認してみることを予定しています。

イヤホンは難しい

半年ほど前から、定期的にイヤホン界隈を市場調査していたのですが、ヘッドホン界隈と比べると正直価格と品質が見合っていないものが多すぎます。それでも秋葉原eイヤホンは土日にはたくさんのお客で賑わっていることを考えますと、余計に「本当に良いものを」手にしてほしいなと思うところです。

ダイナミックオーディオ1Fにも数十種類のヘッドホンが常時試聴できる、eイヤよりはずっと良い環境が整っているのに、この客足の差は何なのでしょう。。。

確かに入店しづらい雰囲気があるのはわかりますが(

やっぱりヘッドホンよりイヤホンの方が手軽に思えるのかな。。。

 

さて、eイヤで購入した製品は2011年から販売されているSennheiser IE60でした。IEシリーズでは下位ランクで実売17000円ぐらいです。直近数年の感覚からするとミドルクラスというよりはローミドルに位置する製品でしょうか。

2013年あたりからイヤホン界隈はAstell&Kernの高級DAPや多ドラBAイヤホンの登場をきっかけに(個人的価値観では)際限のない価格上昇スパイラルが始まった印象です。

その中には確かに優れたものもあることにはあるのですが、どうもステムの中に大量にBAドライバー詰め込めばいいだろうとしか考えておらず出音がハチャメチャな製品も多いのです。挙句の果てにステムが巨大化して耳の中に収まらない、もしくは圧迫して不快に感じるものまで存在します。成人男性はともかく女性も装着することを想定して開発されているのか疑問です。

個人的には耳道の第二カーブまでイヤーピースを深く挿入することを前提とされているものは、危なっかしくて使う気にはならない。耳垢を押し込んでしまう気がするので。。。

 

ステムの中に大量にBAドライバー詰め込めばいいだろうとしか考えておらず出音がハチャメチャ

もう少し説明すると、低域・中域・高域にそれぞれBAドライバーの受け持つ帯域をクロスオーバー・ネットワークで割り振っていくことで、シングルBAよりも広い帯域を再生できる、「ハイレゾ対応」と宣伝するための基準をクリアできるというわけですが、問題は低域から中域、中域から高域の境目が両方のドライバーから再生されるために、特定の帯域が打ち消し合って凹んでしまったり、またはズレて重なった部分が歪んでピークとして目立ってしまうという現象です。

さらにひとつの帯域に複数のBAドライバーを割り当てる製品もあるので、例えば3way12ドライバーという構成のイヤホンがあります。ドライバー数を増やすことで音の厚みと情報量を稼ぐことができる、というのは確かにそうなのですが。。。

この構成に該当する某モデルを聴いてみたことがありますが、正直かなり酷い音でした。

低音はモコモコ籠って抜けが悪く、ボーカルの子音は強烈に刺さり、なぜか高域はクールな質感で音楽全体のバランスが不自然です。(これで20万円か。。。

 

中にはこんなものも。

Low ×4, Mid-low ×4, Mid ×2, Mid-high ×2, High ×8

本当に綺麗に繋がっているのか今度聴いてみようと思います。。。(これも製品名は出しません)

 

 

お小言が過ぎましたのでSennheiser IE60に話題を戻します。確かに現代的な視点から見ると低域の圧は弱いし(私には音楽的に聴くならこれで十分足りると思いますが)高音は伸びない、細かい情報量は出し切れていない部分はあるかもしれません。しかしイヤホンブームが到来する少し前の製品には、現代製品が見失ってしまった「音楽的に再生するための基本」が押さえられています。

私がこれまで何度も書いてきたことですが、中域の充実であり、それを基調とした音楽的な一体感、まとまりの良さといったものですね。私はこういった要素を確保した上で、情報量と分離を求めるのですが、欲張りすぎでしょうか(

 

IE60の装着についてですが、いわゆるシュア掛けをしなくても一般的な掛け方で問題ないと感じました。むしろ耳道に深く入れすぎずに、軽く入れるだけの方が低音の抜けが良くて好みです。

遮音性が必要な場面と、そうでない時で使い分けてもいいでしょう。

 

 

ちなみに今回購入したIE60は、私が使うものではなくて。。。

詳細は、次々回の更新の際に。

近日、eイヤホンで聴いた別のものについて書きます。これが次回の更新となります。

報いるということ

Final D8000ファーストインプレ記事の最後にて

 

rays.hatenablog.com

リケーブルについては純正シルバーコートもありますが、その前に試してみたいことがあるので先方と打ち合わせ中です。

 今回は、その答えについて書くのがメインとなります。

 

 これまでHD800に使っていた102SSC16芯編み込みケーブルを、製作者のE4UAさんに依頼してプラグをD8000用に改修して頂きました。

 

HD800にて使用していた際のインプレは以下過去記事になります。

rays.hatenablog.com

D8000標準ケーブルとの比較になると、意外にも低域の量感は標準ケーブルの方が多く感じます。

その代わり中域がよりフォーカスされて、元々暗めな雰囲気だったのが明るくなります。相対的に中高域の量が増えると、全体の雰囲気が陰性から陽性になる典型的な例です。

102SSCの素線としての柔らかい表現は、そのままD8000でも発揮されています。ヘッドホン自体の描写能力や帯域バランスがHD800よりも向上しているので、素線の差が明確に感じられます。やはり音像輪郭のキレ味ではなく弾力やグルーブ感を引き出す方向です。

音楽全体としてのまとまりも、102SSCの方が好みです。標準ケーブルだと低域だけ別動隊で鳴っている印象があります。

 

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 去年の12月に、HD800リケーブルについて仕様検討を重ねていた際に、E4UAさんからの返信で以下の文章がありました。

16芯の編みこみはとても時間のかかる作業でもあり、これが全長200cmだと2日か3日がかりでの作業になります。

 

当然作業工賃も通常より割り増しですしトータルで10万円超えました。それでも「自分にそれだけの時間を割いてもらっている」という事実があるわけです。

このような実感って普段の日常生活の買い物では湧いてこないものです。作り手と買い手の間に、売り手となる人や企業が介在して、それが見えないような構造になっているから。

 

「これは大事に使わなければならないものなんだ」

使ってみて好みに合わなかったから、もしそういう結果になったとしても、簡単に放り出してはならないんだと。「自分の音」にしなくてはと、そう思いました。

結果としては、最初から非常に好みな音として鳴ってくれました。しかしそれは今私が書いていることの本質ではない。

 

今後のメインはHD800ではなくD8000です。このケーブルを今後寝かせてしまうのはあまりにも寂しいと思い、プラグの移植によってこれからも付き合っていきたいと考えたのです。

それが、あのとき私に費やしてくれた労力に、報いるということではないかと思うのです。

 

永くお使いただけますと嬉しく思います。

 

はい。もちろんですとも。

JPLAY FEMTO -DLNA回帰という選択-

JPLAYがver 6.2から4年振りに7.0へ更新です。

http://www.jplay.info/

 

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ver.6.2ではDACLink 700Hz再生安定を目指しユーザーが試行錯誤する様子がよくみられました。「FEMTO」と冠された今回のver7.0では上限が1000Hzへ拡大されましたが、特に何の工夫もなく安定して再生することができています。

(ちなみにシングルPCモード、ネットワーク再生という環境です)

 

6.2→7.0で特徴的な変更点は

・OpenHome→DLNA

・JPLAYStreamer→FEMTO Renderer

・外部サーバー(MinimServer等)との組み合わせで動作→FEMTO Server

RendererとServerを自社開発したことが音質向上のポイントであり、高DACLink再生安定に貢献しているようです。

これについては思い当たることがあります。6.2の時代にJPLAYStreamerを介さずにfoobar2000でASIOドライバーに適用して再生した方が、DACLinkは高い数値でも安定する傾向がありました。(170→350)

つまりPC側の処理能力と、オーディオに無関係なプロセスの割込み処理問題の他に、ServerとRendererの相性問題が存在していたようです。

ただし音質は低DACLinkでもJPLAYStreamerの方が良いという結果でした。

 

操作性、運用で問題となるのは

・OpenHome→DLNAへの変更 だと思います。

コントローラーはPC上のkinskyという手もありますが、タブレットのBubbleUPnPを活用してPCの負荷を減らす方が良いでしょう。

そしてタブレットのスリープ移行を解除、もしくはできるだけ長い時間スリープに入らない設定にする必要があります。BubbleUPnPにはバッテリーセーブモードがありますが、初期設定ではOFFだったと思いますが適用しない方が良いでしょう。

リビングオーディオでスピーカーから音楽を垂れ流しにしていて、一度プレイリストを組んだらその後はタブレットから手を離している時間が長いような方は必須の設定となるでしょう。

 

もうひとつ、FEMTO ServerがFolder Viewにしか対応していない。私はこちらの方が問題ですね。

Libraryを開いてすぐにアルバムアートがタイル表示されないし、ワード検索することもできないので文字だけ追ってスクロールして目的の楽曲を探すことになります。

それでも6.2の時代とは相当な音質差が認識できてしまったので、今更戻すこともできない状況にあります。。。

 

今回のJPLAY更新において、音質について詳しく書いてなかったですが、つまりはPCがようやく音楽的にまともなネットワークトランスポートとして使えるレベルになったということです。

具体的な要素というと空間表現の抜けの良さ、高域の伸び、といったところですかね。

 

*今回の更新は若干内容薄めです。というのも、JPLAY日本語デスクがフォーラムの内容の流出に対して厳格な措置を行うと公表しているからです。しかしどこからどこまでがOKなのかいまいち判然としないので、記載していた記憶がないものでもどこまで踏み込んで書いて良いかわかりません。一定期間が過ぎた後この記事も削除する可能性があります。